オリンピックへの道BACK NUMBER
五輪代表選考のゴタゴタを忘れるな!
田中智美、リオまでの「地獄の道程」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2016/03/14 11:30
「今回は決まったと思う」と語った田中。日本人2着の小原は「勝負の世界なので1番以外は違うっていうことは十分分かっている」。リオへは1万m出場に切り替える。
失意にもめげず戦い続ける姿勢こそ田中の真骨頂。
「内臓疲労も起こすほどやったのも今日につながったと思います。故障させたらかわいそうだという気持ちも持ちながら見守りました」(山下監督)
ぎりぎりの線まで突き詰めた、ハードなトレーニングであったことがうかがえる。
田中は言う。
「(昨シーズンと今シーズンでは)心技体、すべてが違います」
対する山下監督はこう語った。
「いい意味で変わっていないと思います」
田中は高校時代、インターハイなどに出場したことはない。それでも駅伝の強豪、玉川大学に進学。全日本大学女子駅伝に出場できるまでになったが、区間上位を争う選手だったわけでもなく、注目はされなかった。
そんなキャリアでありながら、第一生命入社後は少しずつ力をつけ、フルマラソンの上位を争う選手にまで成長した。
その姿勢は、この1年も変わることはなかったのだろう。失意にもめげずこつこつとやる姿勢、つまりは田中ならではの武器があってこその名古屋であったことを示唆している。
そこに、失意をばねにした1年の執念が加わった。
それが強くなった田中の、名古屋だった。
リオは、伊藤、福士、田中で決まり。
すべての選考レースが終わった。3月17日、理事会が開かれ、マラソンの代表選手が決まる。
名古屋の成績により、世界選手権入賞ですでに内定している伊藤舞に加え、唯一派遣設定記録を突破して優勝した福士も内定したと言っていい。
残る1枠は、さいたま国際マラソンで日本選手最上位の2位になった吉田香織が2時間28分43秒であったことから、素直に考えれば田中になるだろう。