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ラグビー日本代表新ヘッドコーチ、
ジェイミー・ジョセフが語る“南ア戦”。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAtsushi Kondo
posted2016/02/29 18:00
8月まではハイランダーズのHCとしてスーパーラグビーを戦う。今秋就任する彼は、どんな新しいジャパン・ウェイを見せてくれるのだろうか。
「私が知っている過去のジャパンの選手たちとは……」
「エディーは素晴らしい仕事をしました。でもそれをプレッシャーとは感じていないんです。少なくとも、『オファーを受けるのはやめておいた方がいい』と思うほどじゃない。私にとってはすごくエキサイティングなチャレンジなんです。去年スーパーラグビーを制したばかりだったし、タイミング的にも良かった」
かつて国際舞台で“負け犬”だった日本が、W杯で南アに勝つと思いましたか?
「いいえ。南アは強い。日本にプレッシャーはかけられても、最後には勝つだろうと思っていました。ジャパンの選手たちは、W杯の舞台であんなにやるなんて誰にも思われてなかったからこそ、120%のプレーができた面もあったんじゃないでしょうか。南アは『ヤバい』と思った時にはもう手遅れでした。一方ジャパンは何が何でも勝つつもりだった。最後の数分で(リーチ)マイケルが同点ではなくスクラムを選択したところに、彼らのマインドセットがあらわれていました。それまでも、何度南アフリカに試合をひっくり返されても、決して諦めることがなかった。私が知っている過去のジャパンの選手たちとは思考が明らかに違っていました」
あの南ア戦が基準になる、という難しさ。
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その上で、ジェイミーは今後の課題とプランについても言及してくれた。
「最もむずかしいことは、あの南ア戦が基準になるということです。日本はあのレベルからさらに前進しなければならない。それに次のW杯の時には、多くの選手たちが歳を取りすぎているので、選手を無理なく徐々に入れ替えていきながらね。ニュージーランドほどには選手層が厚いとはいえない中で、選手たちを見極め、彼らをいかにベストな状態に保っていくか。そのプランをじっくり練ることが必要です。それが私のチャレンジでもあります」
ジャパンのターゲットは2019年、自国開催のW杯だ。求められるハードルは高い。
「ええ、タフな仕事だというのはわかってますよ。W杯に向けて、日本の人々の期待がさらに高まることは間違いないでしょう。でも私のコーチ業はいつだってタフでした。'11年にハイランダーズの監督を引き受けた時、チームは死んだも同然の状態でしたが、4年後には優勝させることができたんです。ガンバリマショウ!」
気がつけば、彼の周りにいたハイランダーズのチーム関係者が皆いなくなっていた。遠征でこれから香港へ向かうところとのことだった。「時間を取っていただきありがとうございました」。幸運を祈って片手を差し出すと、相撲取りのように大きな手が握り返してきた。