松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
“自分の番”ではなかった11位終了。
松山英樹「なるべくしてなった」の真意。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/02/23 10:40
パットが入らず、呆然とした表情を見せた松山英樹。「自分の番」ではない日はゴルフにはつきものなのだ。
体調は徐々に回復、パットはどんどん下降。
なるべくして、なった――。悔しさの中で、自戒を込めてそう振り返れるところが松山の強みだ。
最終日のラウンド中は、焦りや苛立ち、プレッシャーからボギーを喫するほど心が揺れたというのに、ラウンド後はどうにか心をイーブンな状態に引き戻し、冷静に自分のゴルフを省みようとする。その繰り返しが松山を大きく成長させてきたに違いない。
振り返れば、今週はいろいろなことがあった1週間だった。フェニックスオープンで米ツアー2勝目をあげた松山には出場2試合連続優勝が期待され、ローリー・マキロイ、マット・クーチャーとともに回る注目組に組み入れられた。
だが、風邪をひいて体調不良。十分に睡眠を取って体調は日に日に回復させたが、パットの調子は逆に下降していき、最終日は「なかなか入ってくれなかった」。
心技体の融合性と安定性。それは、ゴルファーの永遠のテーマだ。どれかが欠ければ、どれかが揺らげば、どんどん流れは悪くなる。一度狂った歯車を途中から噛み合わせるのは至難のワザだ。
悔しさを遡らない、一晩寝たら笑顔。
「18ホール、目指していることができるようにするのが大事だけど、今日はそれができなかった」
歯車を狂わせたのも自分。それを噛み合わせることができなかったのも自分。「なるべくして、なった」とは、そういう意味だったのだろう。
ロープの内側から眺めた松山の呼吸は、終始苦しそうだった。72ホールを終え、日本メディアの取材に応えたときも、その悔しさは癒えてはいなかった。
だが、その日そのときどれほど悔しかったとしても、彼はその悔しさを決して無駄にはしない。自戒を込めて省みる姿勢も、そう。悔しさを引きずらないところ、遡らないところもそうなのだ。
バーディーが奪えずに終わった3日目の上がり3ホールだって「すごく悔しい」と言っていたが、その悔しさはその日まででオシマイにして、最終日に持ち越さないところが、彼の潔さ。だから、この最終日の悔しさも、彼はきっと今日でオシマイにして、一晩寝たら、すぐに笑顔で前を向く。