野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
泥にまみれる高山俊と板山祐太郎。
阪神の輝ける未来は二軍キャンプに。
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/02/17 10:50
二軍春季キャンプでの掛布二軍監督と高山。熱血指導では、早速フォーム改造が始まっていた。
意図的な“失敗”を成功のヒントに変える。
昨年10月、ドラフト会議でのハプニングにも動じなかった。
阪神とヤクルトが競合指名し、金本知憲監督と真中満監督が一騎打ち。くじ引き後、交渉権確定と思い込んだ真中監督が勘違いで喜んだときも、金本監督が「逆転」で交渉権を得たときも、会見場の高山はわずかにほほ笑むだけ。オーバーアクションは一切なかった。
球団関係者が「よくガッツポーズ、しなかったな」と話し掛けると、高山は「指名していただいた他の球団の方に失礼ですから」と言い切ったのだという。わずか22歳にして、落選した相手を気遣える視野の広さ、度量の大きさを備えている。
高山の屋外フリー打撃やロングティーでの驚異的な柵越え数は、すでにスポーツ紙をにぎわしているので触れない。周囲は騒ぐが、自分を見失わない。
8日の特打は101スイングで柵越えゼロ。飛距離が出ない理由を「いいフォームを分かるようにするためです。普段と違う右足の上げ方をして、それがあったから(後で)室内で(打ち込んで)こういうのがいい打ち方と分かった。状態が悪かったことも含めて、いい練習になりました」と説明する。
あえて失敗し、先々、成功するためのヒントにする。
練習の目的意識も明確に持ち、地に足がついている。
金本監督が望んだ激しい競争が安芸で勃発!
新任の掛布二軍監督が初めて迎えた春季キャンプは、かつてない盛り上がりを見せる。
練習試合の韓国ハンファ戦が行われた11日は、二軍キャンプでは異例の2800人が集まるなど、ファンの熱いまなざしがグラウンドの緊張感を生んでいる。指揮官は口癖のように「山山コンビは面白い」と話し、キャンプの見どころを象徴している。
故障明けの高山が実力の片りんを示せば、ドラフト6位の板山祐太郎はガッツむき出しでライバル心を燃やした。
これこそ、金本監督が望む競争だろう。もっとも激しく火花が散ったのは9日の練習だ。
2人は外野の特守に励み、右へ左へ振られた飛球を捕る。下半身をいじめ抜いた後、高山は安芸ドームで再び掛布二軍監督が見守る中、フリー打撃を再開。板山も黙々とマシンを打ち込んでいた。帰り際の板山に聞いた。
あれは自主的な打撃練習なの?
間髪入れずにドラフト最下位のニューフェースは言う。
「高山が打っていた。自分がストレッチに行ったら差が埋まらない。スタートラインは一緒ですけど、アイツの方が評価は高い。そこに追いつくためにも」