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武藤嘉紀は交代させたくない選手?
「点を取る」だけではない新境地。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/02/09 18:10
冬にマンチェスター・Uが獲得に動いたとの報道が流れた武藤だが、今はドイツの地で力をつける時だ。
武藤とコルドバというタイプの違うFW。
マインツは、インゴルシュタットと第1節、第18節に対戦しているが、いずれも0-1で敗れている。インゴルシュタットは失点数がバイエルンについでリーグ2位タイという、堅守が売りのチームだ。
「インゴルシュタット」というキーワードにいち早く反応したのが、『キッカー』誌の記者だった。かつて、ハイデルGMが武藤の獲得交渉のために東京を訪れたというスクープ記事を書いたのも彼だ。
この記者は、シュツットガルト戦で後半36分から武藤に代わりセンターフォワードでプレーしたコルドバのパフォーマンスがまずまずのものだったことを指摘したうえで、監督に問いかけた。翌週に控えていたヘルタ戦で、コルドバをスタメンで送り出すつもりはあるのか、と。
「確かに今日のコルドバは良かったけど、それはわからない。来週の練習もしっかり見ないといけないね。ヨッチ(武藤)は前へ進む力を出していたし、後半にも長い距離を走っていた。ただ、体力的に厳しそうだったから交代させたのだ」
シュミット監督の頭に浮かんだ「構想」。
2015年をしめくくるヘルタ戦を迎える前に、『キッカー』誌だけではなく、複数のメディアがコルドバが武藤にかわってスタメンに入る可能性があると一斉に報じたのも、このやりとりがきっかけだ。
しかし、ヘルタ戦では武藤が先発した。後半20分に武藤はベンチに下がり、コルドバが途中出場を果たした。チームは結局、好調のヘルタ相手にほとんどチャンスを作れないまま0-2で敗れた。実際、この試合で出場したフォワードの選手たちは、誰一人としてシュートを打てなかった。
かくして、シュミット監督の頭のなかにある構想がわきはじめた。マインツが苦手とする堅守タイプの相手に、コルドバを先発として送り出すというアイデアである。もっとも、先に書いた通りに、その起用法は失敗だったと認めることになるのだが……。