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武藤嘉紀は交代させたくない選手?
「点を取る」だけではない新境地。
posted2016/02/09 18:10
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
明るい光がさしはじめた途端に暗雲が立ち込める、というのはよくある話だ。
サッカー選手だってそうだ。好調なときに、頭に沸き上がってくるイメージ通りに身体を動かそうとして、身体がついていかずに怪我をするということも少なくない。
そんなケースが、2月7日の武藤嘉紀にもあてはまったのかもしれない。
武藤は、進化を感じさせるプレーを見せていたのハノーファー戦で右ひざを負傷してしまった。右ひざ外側側副靭帯の損傷で、少なくとも数週間は治療とリハビリにかかるようだ(つまり、3月の日本代表の試合に武藤が出場する可能性は十分にある)。
試合後に通訳の肩をかりてまっすぐロッカールームへ向かった武藤は、選手たちを乗せるバスがマインツへ出発するギリギリの時間まで治療を受けていた。バスに乗り込む前には、ゆっくりとではあったが誰の肩も借りずに歩いていた。
「ちょっと、調べてみないとわからないですね」
怪我の状態をしつこく問いかけた記者に対して、嫌な顔も見せずにそう答えて、武藤はバスへ乗り込んだ。そしてこの日の深夜にマインツに着くと、その足で市内の病院で検査を受けたという。
前半戦ではほぼセンターフォワードだったが……。
まず、今季の武藤の足取りを簡単に振り返っておこう。
第2節のボルシアMG戦から前半戦最後の第17節ヘルタ戦まで、武藤はセンターフォワードとしてスタメン出場を続けた。
ところが、後半戦最初の試合となった第18節のインゴルシュタット戦では先発を外れ、後半26分からのピッチに立った。しかもセンターフォワードではなく、左MFのポジションでの出場だった。
かわりにセンターフォワードの位置に入ったのは、コルドバだった。シーズン開幕後の昨年8月31日に期限付き移籍で加入したコロンビア人FWにとっては、この試合がマインツに来てから初めてのスタメンだった。とはいえ、マインツはこの試合を0-1で落としている。シュミット監督も、自らの戦術が失敗だったと認めていた。