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アロンソが『葉隠』で武士道に開眼?
ホンダに、そして自分にも厳しい男。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/01/31 10:30
昨年のロシアGPでF1参戦250レースを迎えたアロンソを、マクラーレン・ホンダが作成した鉢巻で祝福した。
物議を醸した「GPエンジン」発言。
カナダGPではスタート直後に数台のマシンをオーバーテイクしたアロンソだったが、その直後に燃費が厳しいことが判明。「燃料をセーブしないと、レース後半に大きな問題に直面することになる」とピットから無線で告げられたアロンソは、こう言って、その指示に異論を唱えた。
「敵が迫ってきているのに、戦わずに逃げるなんてアマチュアみたいじゃないか!!」
日本GPではこう叫んだ。
「まるでGP2エンジンだ」
しかし、この発言は物議を醸した。ストレートでなす術もなくオーバーテイクされる状況に、アロンソはホンダのパワーユニットをF1のレベルではなく、GP2のようだと批判したと捉えられたからである。場所はホンダのお膝元である鈴鹿。しかも、日曜日には本社から八郷隆弘社長も激励に訪れていただけに、アロンソの「GP2エンジン」発言は公然のホンダ批判、あるいはホンダへの侮辱と捉えられるのも当然だった。
現にホンダとパートナーを組むマクラーレンのロン・デニスも、レース直後はアロンソの言動を次のようにたしなめていた。
プロフェッショナルの在り方とは?
「プロのドライバーが、あのような発言をするべきではない。あのような発言をしても事態は好転しないからだ。ドライバーたちから聞こえてくるのは、フラストレーション、落胆、そして失望。でも、それはわれわれも同じ。なぜ、彼らはそれを理解しようとしないのだ」
だが、アロンソのこうした一連の発言が、感情的になって不平を吐露したものではないと語るのは、マクラーレンのあるスタッフだ。
「無線が流れていないところで、フェルナンドはもっと厳しい言葉をわれわれにぶつけているからね」