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アロンソが『葉隠』で武士道に開眼?
ホンダに、そして自分にも厳しい男。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/01/31 10:30
昨年のロシアGPでF1参戦250レースを迎えたアロンソを、マクラーレン・ホンダが作成した鉢巻で祝福した。
自分にも、そしてチームにも厳しいアロンソ。
2015年初頭、アロンソがマクラーレンに移籍してきたウインターテストでの出来事。最初のテストでアロンソはある要求を突きつけていたのだが、そのスタッフはアロンソの要求が安全性や信頼性、あるいは大きくパフォーマンスに関わるような重要なものではなかったため、その対策を後回しにしていた。次のテストまでにその要求が達成されていなかったことを知ったアロンソは、そのスタッフに「こんな対応をしていたら、レースでは戦えない」と激昂した。その言動に、そのスタッフはアロンソのチャンピオンとしての自覚の高さをあらためて感じたという。
「いままで見てきたドライバーの中で、彼ほど自分にもチームにも厳しい人間はいない。フェルナンドは真の完璧主義者だ」
いまでも、サーキットには『葉隠』を持っていく。
いまでもアロンソは、サーキットに出かけるとき『葉隠』を携帯している。その中にアロンソが何度も読み返す言葉がある。
「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」
これは死を奨励したのではなく、生のあり方を逆説的に表現した葉隠の根幹を成す一句で、武士道を象徴する言葉である。その真義は、どんなに困難な状況に陥っても、公に尽くすための心構えを説いたものである。
2015年に厳しい言葉を浴びせられ続けたマクラーレン・ホンダが、どんなマシンを2016年に準備するのか。そのマシンについて、アロンソがどんな言葉を発するのか。2月21日の新車発表を待ちたい。