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アロンソが『葉隠』で武士道に開眼?
ホンダに、そして自分にも厳しい男。
posted2016/01/31 10:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
彼と初めて武士道について語り合ったのは、3年前のことだった。彼とは、スペイン人のフェルナンド・アロンソ。前年の2011年に、わずか1勝に終わったアロンソは、姉のロレーナから一冊の本を受け取った。それは『Hagakure』(葉隠)という武士道に関する書物だった。
「私はサムライが好きなわけでもなく、日本の歴史に興味があるわけでもない。ただ、武士道に書かれているいくつかの部分に、レーシングドライバーとして、そして人間としての在り方について、学ぶべき記述がいくつも収められているからだ」
この年(2012年)、アロンソは後半戦で不運な事故に巻き込まれ、チャンピオンシップリーダーの座から滑り落ち、終盤戦は苦戦を強いられた。そのとき、アロンソがツイッターでつぶやいたのが、葉隠に書かれていた言葉だった。
サムライはためらうことなく戦う。
「刀を打折れば手にて仕合ひ、手を打落さるれば肩節にてほぐり倒し、肩切離さるれば口にて首の十や十五は喰い切り申すべく候」
「サムライはためらうことなく戦う。悲願を成就するまで疲れた態度をとったり、わずかな落胆も見せてはならない」
それから3年が経った2015年。アロンソはそれまでにない厳しい1年を経験する。それでも、体に刻み込まれた武士道精神によって、直面する逆境に立ち向かっていった。そして、その心の叫びを私たちは昨年、無線を通して聞くことになった。