プレミアリーグの時間BACK NUMBER
今冬の移籍はプレミア史上最高額!?
バーディー、ベイル、そして武藤嘉紀。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/01/15 10:50
プレミアの移籍市場で存在感を発揮している武藤嘉紀。マンU入りは実現するだろうか。
夏にはアザールとベイルの超大型トレードの可能性!?
一方、今冬の獲得がなければその時代は訪れることなく終わるかもしれない。ベイルには、チェルシーも破格の移籍金と待遇を用意している。加えて、レアル新監督のジネディーヌ・ジダンはエデン・アザールの大ファン。現在のチェルシーにアザール売却の意思はないが、今季終了後にベイルとのトレード、となれば話は別だろう。
しかしそのチェルシーも、今冬の新FW獲得自体を先送りする余裕はない。フース・ヒディンクを暫定監督に迎え、プレミアではトップ4浮上のかすかな可能性を信じて上を目指し、CLとFAカップで優勝を狙う。そのためには、勝利を重ねる「質と層」を兼ね備えた選手たちが必要だ。ところが鍵を握る最前線では、ようやくジエゴ・コスタは復調した感があるが、ロイク・レミとラダメル・ファルカオが故障続きで他にストライカーはいないも同然なのだ。過去にニューカッスルとQPRでプレミア実積のあるレミには、上はリバプールから下はアストンビラまで数クラブが獲得の興味を示してもいる。
兼ねてから噂のあるエディンソン・カバーニ(PSG)獲得は、アーセナルとの競争を覚悟で来夏に持ち越されるだろう。ロベルト・レバンドフスキ、マルコ・ロイスといった他の大物FWに関しても同様。クラブはアレックス・テイシェイラ(シャフタール)、カルロス・バッカ(ミラン)らを今冬の現実的ターゲットとして動いている。
新記録が見込まれる今冬、そして夏も過去最高に?
レミが売却され、ファルカオは戦力化の目処が立たないままとなった場合の新FW2人目には、ベライノも検討されている。しかし、コスタに次ぐ2番手を競う1枠ではパトリック・バンフォードの扱いも注目される。4年前に18歳でチェルシーに買われた純イングランド風センターFWは、昨季レンタル先のミドルズブラで合計19得点。2部リーグの年間最優秀選手にも選ばれたが、今季もチェルシーから通算5度目のレンタルに出された。レンタル先のクリスタルパレスでもアラン・パーデュー監督と反りが合わずに不遇だった。
しかし、レンタル途中解約で戻ったチェルシーではヒディンクが登用を検討し始めている。ベライノを穫った場合、出場機会が限られる状況に得点力ではなく不満が爆発する恐れがあるが、バンフォードであればチェルシーでの初のチャンスに辛抱強く耐え、数ゴールのみで今季後半戦を終えたとしても準自家製の1軍定着がプラスと受け止められる部分がある。言わば、移籍金を必要としないモラル面のブースト。指揮を執る暫定監督は、来季からの次期正監督に未来への下地を手渡す任務を負ってもいる。
新記録達成が見込まれる今冬の移籍市場で、「ベイルがマンUでプレミア復帰」のような派手なニュースはもちろん大歓迎だが、「バンフォードがチェルシー残留」という地味な知らせも一服の清涼剤として歓迎できる。2月1日の市場閉幕から半年も経たない内に、やはり過去最盛況が見込まれる夏の市場も開くのだから。