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本田放出はミランにとって13億円に!?
誰も抗えない移籍市場の「力学」とは。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/12/28 10:30
報道のスタンスも状況も日替わり状態の本田圭佑。果たして「市場」はどんな判断を下すのだろうか。
「本当に本田が欲しかった。だが……」
ところでボローニャで中田とチームメイトだったFWターレは、'08年に引退した後、ラツィオのフロント職に就いた。4年前の冬、SD(スポーツ・ディレクター)として、CSKAから本気で本田を獲得しようとしたことがある。
交渉が破談になり、しばらく月日が経った後、彼のオフィスでインタビューをする機会があった。
W杯得点王クローゼを移籍金ゼロで獲ったのに、本田獲得には1300万ユーロを用意したこと。
本田と直接会って、本人の口から「イタリアへ来たい」と言われたこと。
交渉相手であるロシア人の思考法を理解するのに苦しんだこと。
ターレSDの話はどれもこれも興味が尽きないものばかりだったが、「あのタイミングだったから欲しかった」という一言が今でも忘れられない。乾いた声で彼はこう続けた。
「本当に本田が欲しかった。だが移籍市場には、絶対に逃してはならないタイミングと抗えない力学がある」
ミランの金庫が必要としているものは?
今、本田はミランの10番を背負っている。
当時とは、彼の持つ条件も環境も大きく変わった。本田の去就が語られる場は、サンシーロのプレスルームだ。
「高額年俸がネックとなって、本田のイタリア国内移籍は難しいかもしれない」とある番記者が囁けば、別の一人は「来夏とされる現実的な移籍先は、MLSかトルコ、ギリシャリーグあたりじゃないか」とつぶやく。移籍先候補としてさんざん騒がれるプレミアリーグについては、「あそこは誰もかれもが時速100キロで突っ走ってるところだからな」と、適応を訝しがる声も聞いた。
この冬、本田を売るのか、それとも残すのか。ミランの金庫が必要としているのは当期売上なのか、中長期的な利益か。あらゆる要素を加味した上で、メルカートの判断は下される。
真意の見えないえびす顔を浮かべながら、ガッリアーニが腹の底で算盤を弾き続ける1月がもうじき始まる。