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本田放出はミランにとって13億円に!?
誰も抗えない移籍市場の「力学」とは。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/12/28 10:30
報道のスタンスも状況も日替わり状態の本田圭佑。果たして「市場」はどんな判断を下すのだろうか。
本田の放出で、ミランは13億円が浮く!?
もし、貴方がミラン副会長ガッリアーニなら、現在のタイミングで本田を放出する金銭的メリットは、つねに頭の隅にあるはずだ。
2年前の冬、“東洋のベッカム”として華々しくミラノへやってきた本田の手取り年俸は、チーム内でも高給にあたる250万ユーロとされている。
契約満了にあたる'16-'17年シーズン終了時までに、ミランは税金も含めて総額536万ユーロ相当を本田側に支払わなければならない。
この冬、仮に背番号10へ完全移籍のオファーが届いてそれが成立すれば、クラブの支出からその7億円分がまるまる浮く。
また、オファー額が500万ユーロもあれば、本田放出が、差し引き1000万ユーロ=13億円超の商いになることを意味する。
慢性的な赤字に苦しむミランにとって、1000万ユーロは決して小さくない数字だ。その上、本田はもともと移籍金なしで入団させた選手だから、獲得の元手がかかっていない。
そして、現在のミランFW陣は大所帯だ。
コロンビア代表FWバッカと進境著しい若手FWニアンが2トップを占め、3番手に今季新加入のFWルイス・アドリアーノが控える。2列目の左にはMFボナベントゥーラが、また右にはFWチェルチがそれぞれ重用されてきた。
年明けには、長期故障から復帰する悪童FWバロテッリと昨季のエースFWメネズが合流してくる。そうなれば、ロッカールーム内の序列や起用法はまた一変するだろう。
今季が終了すれば、本田は30歳になる。
20代最後の半年を、出場機会を楽観視できないまま過ごすのは、彼にとっても本望ではないはずだ。
12年前に中田英寿がした“都落ち”の決断。
12年前の冬、27歳になろうとしていたMF中田英寿はパルマを離れ、ボローニャへレンタル移籍する決断をした。
前年シーズンに背番号10をもって迎え入れられた中田だったが、当時まだ強豪の一角だったパルマでの2年目に、プランデッリ監督の下でプレー機会を失っていた。
ボローニャへの移籍は“都落ち”ではあったが、老練な指揮官マッツォーネはペルージャ時代の教え子である“ヒデ”を残留争いの貴重な戦力として重用した。中田は期待に応え、コンディションを甦らせると17試合に出場し、2ゴールを奪いながらチームを12位に導いた。その後半戦の活躍をもって、続く夏に中田はフィオレンティーナ移籍を手繰り寄せた。