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スタンドは埋まれども、盛り上がらず。
気づけばバルサが勝っていた準決勝。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byYoshihiro Koike
posted2015/12/18 11:25
試合直後には早くも決勝について言及していたスアレス。母国ウルグアイのライバル、アルゼンチンのリーベルプレートには負けられない、と。
気づけばバルサは3-0で勝っていた。
ゆったりとしたペースで確実にボールを動かしながら、相手の気力と体力を少しずつ削ぎ落としていく。そんなボディーブローのような試合運びを90分間貫きながら、気づけばバルサは3-0で勝っていた。
先制点は、ラキティッチがミドルシュートを放った瞬間にこぼれ球が生じる可能性を予測し、いち早くゴール前に走り込んだスアレスの嗅覚。追加点はモヒカン頭のイニエスタが繰り返しチャレンジしたピンポイントの浮き球パスと、やはりスアレスが魅せた圧巻のフィニッシュ。そしてダメ押しの3点目は微妙なジャッジがもたらしたPK。
自陣に引いて守りを固めてはいるがボールホルダーへのアプローチが甘く、チームファウルがバルサの15回を下回る9回にとどまるクリーンなプレーに終始した広州を打ち負かすには、それだけで十分だった。
多くのファンのお目当てだっただろうネイマールとメッシの不在に加え、試合がそのような内容に終始したこともあってか、日本最大の収容人数を誇るスタンドの88%超を埋めたこの日の観衆は、ゴール裏の真っ赤な広州サポーターを除いていまいち盛り上がり切れていない様子だった。
ネイマールも、メッシも決勝に向けて調整中。
とはいえ、リーベルとの決勝では横浜の地で「MSN」の共演が見られる可能性がある。
準決勝の前日よりピッチでランニングを始めたネイマールは、この日の試合に先駆けて「I'm back」とSNSに投稿。試合後にはメッシがFacebookにて以下のコメントを発している。
「どんな試合でも逃すのは辛い。でも決勝を100%の状態で迎え、チームの力になれると期待しているよ」
広州相手には、スアレスの得点力とイニエスタの閃きだけで十分だった。だがリーベルは相手の強みを消し、自分たちのペースに引きずり込む術、つまり勝ち方を知っている難敵だ。相手にとって不足はない。
それに決勝では、長居陸上競技場と道頓堀を占拠した多数のインチャ(ファン)が大いに試合を盛り上げてくれることも期待できる。
ファイナルを彩る舞台は整った。あとは役者が揃うのを待つのみだ。