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今もウッズが「一流」である理由。
社会貢献への日米の温度差を考える。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2015/12/20 10:50
2015年に2つのメジャー大会とツアーチャンピオンシップを勝ったジョーダン・スピース。
世界ランク400位を下回ったウッズは一流か。
タイガー・ウッズが君臨してきたこの20年、選手としての「一流」は「一番」とほぼ同義語だった。
1996年のプロ転向以来、ウッズは勝つことだけを目指して戦い続け、メジャー14勝を含む米ツアー79勝を挙げた。かつて世界ランク1位の王座に座ること、623週。誰よりも「すごい」「うまい」「強い」。だからこそ、ウッズは一流と見なされてきた。
しかし、近年は故障やスイング改造に端を発した不調に陥り、すっかり勝てなくなっている。2008年の全米オープン以後、メジャー優勝はなく、2013年8月のブリヂストン招待を最後にレギュラー大会の優勝からも遠ざかっている。
腰痛悪化でヘルニア手術を重ねた現在は、戦いの場に復帰できる目処すら立たない状況にある。世界ランクは、ついに400位を下回った。だが、それでもウッズを二流、三流と呼ぶ人がいないのは、彼に成績以外の面で突出した一流性が備わっているからだ。
褒められない面もある。それでも彼の貢献は多大だ。
タイガー・ウッズ財団による大会運営、ジュニア指導、チャリティ活動。さらには、軍隊や退役軍人への支援活動。それらは、成績低下や戦線離脱によってウッズに暇ができたから始めたというわけではない。黄金時代の多忙な日々の合間にもウッズはそうした活動を行っていたのだが、「強いウッズ」ばかりが目立ち、「社会貢献に力を注ぐウッズ」は、あまり認識されていなかった。
プレーヤーとしての活動を休止している今は、後者のウッズが以前より浮き彫りになっている。もちろん、ウッズとて聖人君子ではない。2009年暮れに勃発した不倫騒動が物語ったように、彼には決して褒められない面が過去には多々あった。だが、あんな騒動を経た今でもウッズの存在が多大であると認められている理由は、騒動後の彼が公私に渡り、人並み以上の努力を積んできたからにほかならない。
そんな意味も含め、ウッズの背中を見ながら腕を磨いてきた若い選手たちは、あらためてウッズの一流ぶりを眺めながら、「さすがはタイガー。彼は超一流だ」と唸っている。