セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
新エース誕生でユーベが完全復活。
テベスを手本に成長を続けるディバラ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/12/18 10:30
22歳のディバラはそのルックスもあいまってユベンティーノの注目の的。偉大なるテベスの後任という大役を果たせるか。
地元紙は4000万ユーロの男に容赦ない罵声を浴びせた。
シーズン序盤にベンチスタートが続いたことで、ある地元紙は「ディバラ獲得に費やした4000万ユーロはクラブ史上4番目にあたる高値だった。彼は『ブッフォンやテュラム、そしてネドベドのレジェンド3人に次ぐ価値が自分にはあるのか』と自問自答しないのか?」と意地悪く書きたてた。
当初、FWマンジュキッチやFWモラタ、FWザザなど上背のあるストライカーたちを先発2トップとして優先起用したアッレグリ監督にも、メディアの批判は及んだ。
指揮官はたまらず「4000万払うと決めたのは私ではなくクラブだ」と声を荒げ、ビッグクラブ初挑戦のディバラに「リーダー扱いされていたパレルモと王者ユーベでは、背負う責任の質が異なる」と、より一段高いレベルへの順応を促した。
指揮官にもディバラ本人にも、プレッシャーは重くのしかかっていた。
「真珠のようなゴール」で高らかにエース襲名。
ただし、アルゼンチンの2部から叩き上げで育ったディバラは、この手の批判に大人しく引き下がるタイプではなかった。
「4000万の話は聞き飽きた」
11月のエンポリ戦でダメ押し弾を挙げた後、「ここからクリスマスまで勝ちつづける」と威勢よく宣言。1-0で競り勝った13節ミラン戦では、今季3度目の決勝ゴールを奪った。
5連勝を果たした15節ラツィオ戦では鋭いシュートで先制OGを誘うと、32分には鮮やかなゴールを右隅に決めた。FWマンジュキッチから受けたパスを右足で軽く捌き、左太ももで浮かせた後そのまま左足を振りぬいた。その一撃について、翌日の地元紙は「真珠のようなゴール」と絶賛。若武者は、満天下に“新エース襲名”を知らしめた。
ディバラの進化は、戦術とフィジカルの両面からもたらされたものだ。
パレルモ時代の彼は、名女房役FWバスケスからのアシストを受ける、4-4-1-1の純然たるフィニッシャーとして名をあげた。
しかし、上位追撃にかかったアッレグリがディバラへ求める役割とは、ゴールからやや距離を置き、中盤とペナルティエリアを繋ぐ位置で攻撃のタクトを振るトレクアルティスタ(トップ下)としての働きだ。