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アガシが語った錦織圭の長所と課題。
「ショットメークは史上最高の一人」
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/12/16 10:30
アガシは質問に的確に、そして多彩な返しで応えてくれた。その並外れた知性も、現役時代彼の武器の一つだった。
マイケル・チャンについて錦織が変わったこと。
――あなたはグランドスラムで数度の準優勝を経て初優勝しましたが、錦織選手も最初は準優勝でした。そこから何か学ぶことができたと思いますか。
「大切なのは、勝てると信じることです。前回の決勝で彼にとって不利だったのは、肉体的な負担が大きかったことです。5セットマッチは彼にはどうしても不利になります。あの決勝でも、体調の問題がなければもっと多くを学ぶことができたと思います。ただ、負ける必要があったとは思いません。勝つ人は1回目から勝ちますからね。彼には今後もチャンスがあるでしょう。そしてそのチャンスがあることを私も願っています」
――マイケルの貢献について、もう少し具体的に話してください。
「正直、錦織のゲームをよく見るようになったのは、彼がマイケルについてからです。それからの彼の大きな進歩は、より戦略的になったことです。ショットの選択や、どこでチャンスを見出すかという点ですね。自分が支配する形でプレーすること、攻撃に自信を持つということについて、うまくマインドセットができるようになったと感じます。
また、バランスがうまくとれるようになりました。全部のポイントを取りにいこうという考え方はプレッシャーにつながるのですが、そうしなくていいんだということに彼は気づいたはずです。それも素晴らしいことです。あとは、長いマッチを戦える体力をつけるうえで、マイケルの貢献があったと思います。これからも彼を見続けたいですね」
今年は難しい年だった。来年こそがチャンス。
――マイケルは「成績が良かった年の次の1年は難しい」と言っていましたが、あなたもそう思いますか。
「そうですね。'14年は“ニシコリはグランドスラムで勝てるんじゃないか”と周囲が思い始めた最初の年であり、彼の存在がほかの上位選手の脅威となった最初の年でした。そこからだれもが対錦織の準備をするようになったのです。ですから、次の'15年に彼がもっと上に行くというのは考えにくいことでした。
ただ、そこで落ちていってはいけないし、良い位置につけ続けることが大切なのです。体調を保ち、自信をつけて、態勢を整える1年になればと思って見ていました」
――錦織選手にはグランドスラムで優勝するチャンスがあるとのことでしたが、最もチャンスが大きいのはどの大会ですか。
「全米オープンと全豪オープンの2大会が最も勝つ可能性が高いと思います。全米はより大きな可能性がありますね。なぜなら、速いゲームになるので、彼のショットメークの力を生かしやすいからです」
――長い時間、ありがとうございました。