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誰よりも早く交代させられた宇佐美。
CS決勝でガンバのエースは甦るか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/30 18:20
現代のサッカーに、守備が免除されるポジションは無い。宇佐美貴史はその事実とどう折り合いをつけるのか。
19得点では、宇佐美には物足りない。
また、日本代表と同じ左サイドでプレーするようになった影響も出ている。ゴールから距離が離れてしまい、自分で決める難易度が増した。宇佐美の良さのひとつである得点感覚はゴールに近いところでこそ発揮されるが、その良さが失われ、一定の角度からワンツーでもらってシュートなどパターン化した攻撃が増えた。
ナビスコカップ決勝で戦った鹿島の昌子源が「サイドに入ってから攻撃がワンパターン化しているんで、それほど怖さはなかった」と語ったことが象徴するように、各チームは宇佐美対策を十分に練り、その効果が数字にも表れてきた。セカンドステージは17試合でわずか6得点とゴール数が激減し、9月26日の柏戦以来5試合ノーゴールでセカンドステージを終えたのだ。
並みの選手なら、チームに得点のお膳立てをすれば「よし」とされるだろうが、宇佐美はガンバのエースであり、日本代表のエース候補でもある。宇佐美が持っているポテンシャルからすれば、シーズンの結果(19得点)は物足りなさが残る。ゆえに、このチャンピオンシップの大一番でエースとしての意地を見せ、結果を出せるのか。宇佐美の「今後」を推し量る意味でも、浦和戦は非常に重要だったのだ。
「貴史の足がとまったのを見て」は本当か。
だが、宇佐美はエースとしての役割を果たすことができなかった。パトリックが前線で頑張ってキープしている中、連動する動きの量が少なかったし、プレー自体も淡泊だった。前半こそ3本のシュートを放ったが、後半は動きが落ち、ピッチから消える時間が増えた。長谷川健太監督は試合後、「貴史の足がとまったのを見て、交代した」と語ったが、本音はプレーそのものにも物足りなさを感じたからだろう。
ベンチに落ち着いた後も、試合を見つめる表情は心あらずという様子で、試合に入っている感じはしなかった。試合が終わったあとも、その表情はどこか冴えなかった。1年前、サンフレッチェ広島とのナビスコカップ決勝でリンスと後半39分に交代し、勝った後にベンチで涙を流して喜んでいたのとは、まるっきり違う姿がそこにあった。