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誰よりも早く交代させられた宇佐美。
CS決勝でガンバのエースは甦るか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/30 18:20
現代のサッカーに、守備が免除されるポジションは無い。宇佐美貴史はその事実とどう折り合いをつけるのか。
海外からのオファーに心を奪われていないか。
この試合の数日前、宇佐美に海外クラブから打診があったという。海外クラブから興味をもたれるのは、宇佐美自身がこれまで成し遂げてきた実績への評価であり、すばらしいことだ。宇佐美は、日本でこうした権利を得られる数少ない選手の1人であり、それだけのポテンシャルを持っていることはハリルホジッチ監督も認めている。
この時期に正式なオファーが来ているとすれば、内心は落ち着かないだろう。一度海外で苦汁を舐めているだけに、今度はどうしても慎重にならざるをえない。決断するまでの時間は限られているし、家族もいるので考えることが多いはずだ。
だが、もし、そうした部分がプレーに影響したのであれば、本末転倒だ。宇佐美はガンバのエースとして点を取り、ガンバを勝たせる責任がある。それがホッフェンハイムからガンバに戻ってきた時、快く受け入れてくれたガンバへの恩返しになるし、それを実現してこそのエースだろう。
エースが最初に交代させられたことの意味を。
また、チャンピオンシップのような大一番で結果を出し、チームを勝利に導くことでプレイヤーとしてひとつ上のレベルにいくことができる。そのレベルに達するために日本に帰国し、ガンバに戻ったはずだ。
では宇佐美は帰国して2年半、エースとして重要な試合で爪痕を残せただろうか。たとえば昨年、3冠を達成したが天皇杯決勝の山形戦では2得点1アシストの活躍をした。しかし、広島とのナビスコカップ決勝は得点を奪えず、リーグ戦優勝を決めた徳島戦はスコアレスドローに終わった。今シーズンはセカンドステージの鹿島戦での2ゴールは見事だったが、乱打戦になった川崎戦、勝利が必要だった万博での広島戦では沈黙し、さらにナビスコカップ決勝の鹿島戦では前半にカウンターで持ち込んだ決定機を外すなど点を奪うことができなかった。
そして、今回の試合である。
チャンピオンシップ準決勝という一発勝負の重要な試合で、エースがチームで一番最初に、しかも後半27分という早い時間に交代させられたという現実を宇佐美は今一度、噛み締めるべきだろう。