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美輪明宏が語る浅田真央の魅力。
「国民的スター」の条件とは?
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byYoshinori Mido
posted2015/11/26 10:00
復帰した浅田真央選手にエールを送る美輪明宏さん。
どの瞬間をストップモーションにしても、絵になる。
「『美しく』という意識は、真央ちゃんも同じなのでしょう。だからこそ、2人の演技はどの瞬間をストップモーションにしても、絵になっている。これは、地唄舞の世界で『動く錦絵』と言われた武原はんさんとも共通していますね。あの方も、いついかなる瞬間にシャッターを切っても、絵になっていましたから。
特に、ソチ五輪のフリーでの真央ちゃんは、完璧に演技に入り込んでいたように見えました。残念ながらショートプログラムでは『しっかりやらなきゃ』とか、『失敗しないように』とか、余計なことが頭をよぎったのでしょうけど、フリーでは心から演技を楽しんでいた。自分が演技に入り込んで、楽しめているからこそ、観客を『私の世界にどうぞ』と案内することができるし、実際に観衆は惹きこまれたのです」
「緊張」とは「余裕」である。
五輪の本番ともなれば、想像を絶するプレッシャーがのしかかるはず。どんなトップアスリートでも、緊張したり、結果を気にしてしまうのは自然なことのように思える。ところが美輪さんの理論によると、「緊張」とは「余裕」である。
「私もよく、舞台で若い俳優さんや女優さんから『緊張して、あがります』と相談されることがあります。そんなとき私は『あなた、随分余裕があるのね』と言うのです。人間は、余裕があると余計なことを考えてしまう。だから、緊張する」
ならば、役者やアスリートはどうすれば緊張を克服することができるのか。なぜ浅田選手はソチ五輪のフリーで重圧をはねのけ、観衆を魅了することができたのか。美輪さんの話は熱を帯び、インタビューは予定していた時間を大幅に超え、1時間半に及んだ。取材を終え、玄関先まで我々を見送っていただいた際には、「ごきげんよう。さようなら」。
戦前・戦中・戦後の時代を生きてきた美輪さんだからこそ語れる「浅田真央論」。そのエンディングは、まるで『花子とアン』のようだった。