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美輪明宏が語る浅田真央の魅力。
「国民的スター」の条件とは?
posted2015/11/26 10:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Yoshinori Mido
まるで、『オーラの泉』。煌びやかなシャンデリアの下、豪奢なソファに座る姿勢はピンと伸び、太く伸びやかな声は、優しくこちらの耳に届く。御年80歳の現在も、若かりし頃と同じく2オクターブ半の音域を保っているというのも納得だ。
Number890号の取材で浅田真央選手の魅力について語る美輪明宏さんは、テレビや舞台で見る姿と同じく、圧倒的な存在感を放っていた。17歳で歌手デビューして以来、映画界や演劇界、文壇からスポーツ界まで、数々の著名人と交流を深めてきた方だから「私は比較することができるのです」と語る。
では、著名人の中でも「国民的スター」となるための条件は。この質問への答えとして美輪さんが挙げたのが、「人間性」だった。
人間としての基本ができている。
「長嶋茂雄さんも王貞治さんも、国民的な人気となりましたけど、2人とも礼儀作法や言葉遣い、たしなみがきれいで、奥ゆかしさがあります。人格者で義理堅い。高倉健さんもそうですね。人間としての基本ができているから、老若男女から愛される。真央ちゃんもそうです。
真央ちゃんが注目を集め始めた'05年頃、日本には同時多発的に素晴らしいアスリートが現れました。野球の斎藤佑樹さん、ゴルフの石川遼さん、体操の内村航平さん。彼らに共通しているのが、言葉遣いや礼儀作法がきちんとしていて、日本語が綺麗。親孝行で、周りの選手たちと和気藹々としていて、対戦相手の悪口は決して口にしない。場合によっては、尊敬さえしている。
その中で、女性アスリートのトップを切ったのが真央ちゃんだったと思います。お雛様のような顔立ちで、大和撫子としての恥じらいや節度ある態度に、国民の誰もが惹きつけられました」
次々と現れたトップアスリートの中で、特に美輪さんの心を掴んだのが、内村航平選手と浅田真央選手だった。2人に共通しているのが、自身の演技への「美意識」だと言う。
「内村さんは、どんな舞台でも勝ち負けではなく、『美しい体操を目指します』と口にします。そんな選手、今まで一人もいなかった。『着地に失敗しないぞ』とか、『メダルを取るぞ』と考えるのではなく、初めから終わりまで美しく演じることで、演技を芸術にまで高めようとする姿勢に、私は唸ったのです。だから私は『内村さんのお嫁に行くことを、閣議で決めました』とメディアにお伝えしました(笑)」