沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
キタサンブラック菊花賞制し7戦5勝。
北島三郎、馬主歴53年目のGI初戴冠。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2015/10/26 16:50
世代最強馬ドゥラメンテの欠場で混戦となった菊花賞を制し、王座争いに名乗りをあげたキタサンブラック。
アカペラで歌った『まつり』にスタンドも沸騰!
レース後、スタンド前で異例の「勝利オーナーインタビュー」が行われた。
「歌うよ」と北島三郎さんが言うと、5万人を呑み込んだスタンドから大歓声と拍手が沸き起こった。
「まーつりだ、祭だ祭だ、キタサンまつーり♪」と即興で愛馬の菊花賞優勝バージョンの歌詞をアカペラで歌い、こう締めた。「これが競馬の祭だよ♪」
馬主生活53年目にして悲願のGI初制覇。「もうすぐ80歳になりますが、こんなに感動した日はありません。道中はいいポジションにいたので頑張ってほしいと思い、直線で内から抜けてきたときは『行けー!』と叫んでいた。ゴールしたあと涙がこみ上げてきました」
そう話した北島さんが「顔が二枚目で、ぼくとよく似ている」と言うキタサンブラックは、1963年に馬を所有するようになってから170頭目の所有馬だった。牧場で見たとき細かった馬体はすっかり逞しくなり、530キロという菊花賞史上最高の馬体重で優勝。
また、セントライト記念優勝馬による菊花賞制覇は1984年のシンボリルドルフ以来31年ぶりと、「破常識」な強さを見せた。
次の挑戦は有馬記念か香港国際レースか?
父はディープインパクトの全兄のブラックタイド。ディープ産駒はリアルスティールの2着が最高で、「芝3000m以上は未勝利」というジンクスをまたも破ることはできなかった。
それに対して、キタサンブラックは、不安材料とされていた母の父サクラバクシンオーの血の「爆発力」というよさだけを発揮した印象がある。道中、やや行きたがってはいたが、それでスタミナをロスすることはなかった。
これで7戦5勝。負けたのは皐月賞(3着)とダービー(14着)だけだ。
なお、管理する清水久詞調教師にとってもこれがGI初制覇だった。生産者のヤナガワ牧場にとってはコパノリッキーによるフェブラリーステークスにつづく今年のGI2勝目。8頭の生産馬を送り込んできたノーザンファームをはじめとする社台グループ生産馬13頭を向こうに回し、大きな勲章をつかみとった。
キタサンブラックの次走は、有馬記念か香港国際レースになる模様。
この強さなら、グランプリでも海外のGIでも自身の「まつり」にしてしまいそうだ。