セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
194cmの長身、ダンス仕込みの柔軟性。
イタリア代表に現れた救世主・ペッレ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/10/22 10:30
前線でボールが収まるペッレは、イタリア代表の攻撃のまさに起点だ。
オランダでゴールを量産しても声はかからなかった。
29歳でアズーリ初招集を受けた遅咲きながら、ペッレの持つ194cmの高さとボールをキープするテクニックは、アズーリの攻撃に前線での基準点と安心感をもたらした。
ゴツく見えても、プレーは柔らかく、足元のステップがぶれない。しなやかな体の使い方は、少年時代に姉と組んで全国優勝するほど打ち込んだ社交ダンスで覚えた。
イタリアでは芽が出ずにオランダへ渡り、ファンハールとクーマンという智将2人に薫陶を受けたペッレは、エールディビジでゴールを量産。“イタリアの種馬”の異名を頂戴し、オランダの人気者となったが、欧州5大リーグの外にいた彼を前代表監督プランデッリは無視した。
「だから、プレミアリーグに移籍してそこでも点を決めれば、どんな代表監督でも俺を招集しないわけにはいかないだろうと思った。夢だったアズーリへ呼んでくれたコンテ監督が、今年3月の(親善試合)イングランド戦に『おまえを出すぞ』と言ってくれたときには意気に感じたさ。疲れもあって膝も足首も痛かったけれど、いい試合だったし、ゴールを決めることもできた。俺なりに男を見せたかったんだ」
535分で36回のポストプレーを成功させた。
周囲を生かすポストプレーと決定力を兼ね備えたイタリア代表FWの系譜は、'68年の欧州選手権を制した名FWリーバやドイツW杯王者のFWトーニ(ベローナ)に連なる。
「ペッレには技術とパワー、そしてチームプレーへ協力しようという意志がある。言う事なしだ」
国営放送RAIの解説者であり、EURO2004でアズーリを率いた御大トラパットーニも、現代表におけるペッレの重要度を説く。
ペッレは受けたボールを足元に収め、味方のアタッカーたちが敵ゴール前に飛び込むための数秒間を確実に稼いだ後、展開して自らも攻撃に加わる。今予選でプレーした535分間で、彼のポストプレー成功数は36回にも及んだ。得点そのものもさることながら、ペッレの戦術有効性が、イタリアの予選グループ首位突破を可能にした原動力の一つだったことは間違いない。