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194cmの長身、ダンス仕込みの柔軟性。
イタリア代表に現れた救世主・ペッレ。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byAFLO

posted2015/10/22 10:30

194cmの長身、ダンス仕込みの柔軟性。イタリア代表に現れた救世主・ペッレ。<Number Web> photograph by AFLO

前線でボールが収まるペッレは、イタリア代表の攻撃のまさに起点だ。

クロアチアの自滅にも助けられ、1位で予選突破。

 もちろん、アズーリの1位通過は、ライバル国クロアチアの自滅に助けられた面が大きい。

 予選グループHの最強国と見られていたクロアチアは、6節終了時点で首位に立っていた。しかし、同国スプリトにイタリアを迎え、1-1のドローに終わった6月12日のホームゲームで、グラウンドの芝に鉤十字マークが刈り込まれていたことが発覚。重大な人種差別行為にあたると判断したUEFAは、7月下旬、クロアチアへ10万ユーロの罰金と無観客試合2試合、そして今予選の勝ち点1を剥奪する処分を下した。

 9月3日の予選7節マルタ戦に1-0で勝ったイタリアはグループ首位を奪い返したが、シチリア沖に浮かぶ極小の島国相手の辛勝を、現地メディアは「正視に堪えない、ひどい内容」、「我々はリヒテンシュタインではないのだ。何も喜べない」などと猛然と批判した。

 コンテはその毒舌と過去の八百長関与疑惑によって、イタリア・メディアと良好な関係を築いているとは言えない。代表監督に極度の心理的重圧は付き物とはいえ、9月18日にUEFAがクロアチア協会による処分撤回要求を退け、勝ち点剥奪処分が確定したとき、コンテはほっと胸を撫で下ろしたにちがいない。

FWにボールが集まる4-2-4システムが奏功。

 コンテのチーム作りにおける2つ目のターニングポイントは、この10月の連戦における戦術運用だ。

 ホームで先制されたノルウェー戦は、自力での2位突破をかけて死にもの狂いで自陣に引きこもる相手の守備ブロックを突き崩した末の逆転勝ちだった。

 3-5-2の先発布陣で臨み、攻めあぐねたイタリアだったが、4-2-4へスイッチした途端、水を得た魚のように終盤の攻撃ラッシュへ転じた。62分と72分にそれぞれ投入されたFWジョビンコ(トロントFC)とMFカンドレーバ(ラツィオ)が、74分の同点アシストと82分の逆転弾の起点を生んだ。的中した采配に、コンテは手応えをつかんだ。

「4-2-4は、私がバーリとシエナでセリエBで機能したシステム。この代表チームで再び戦術に合う選手を揃えることができたが、機能させるには段階を踏む必要があった」

【次ページ】 小粒とはいえ、アズーリのFW陣は絶好調。

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