フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ニューヨークに美しい冬が近づいて……。
五輪アイスダンス王者が語る復帰への道。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2015/10/17 10:40
NYっ子の冬は、街中にあるアイススケートリンク開きから始まる。ロックフェラーセンターのリンクでは、デイビス&ホワイトの美しい演技が披露された。
身体能力が高すぎる!? 無良崇人へのアドバイス。
ホワイトは今年は新たに振付師としてもデビューした。無良崇人の競技用のプログラムの振付を担当したのである。
「アイスショーで日本に行ったときに、彼のコーチから打診をされました。シニアレベルの男子の振付はこれまでやったことがなかったので、正直ちょっと驚いたんです。こちらから一方的に与えるのではなく、一緒にやってみよう、という姿勢で取り組みました」
振付けたのは、SPの「黒い瞳」。アイスダンサーであるホワイトにとって、無良との作業は新鮮だったという。
「彼の身体能力の高さは、驚くほどでした。あまりにも簡単にジャンプをこなしてしまうので、嫉妬したくなったほどです」
具体的にどのようなアドバイスを与えたのか、と聞くと少し考えてからこう言った。
「ぼくの知識は、全て(コーチの)マリナ(ズエヴァ)から与えられたもの。彼女はぼくらに、どんな状況でも全能力を出し切って滑るようにと叩き込んだ。タカヒトはあまりにも身体的能力が高いので、100%出し切らなくてもそこそここなせてしまう。だからどんな状況でも手を抜かないで、100%の力で滑るように、と伝えました」
若い新チャンピオンを絶賛したデイビス。
彼らが不在だった昨シーズン、アイスダンスには新しい流れが生まれていた。
3月の上海世界選手権で、それまでほぼ無名だったフランスの若手チーム、ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロンがいきなり世界王者となったのである。前年は13位だった組がわずか1シーズンで世界の頂点に到達したのは、アイスダンスでは前代未聞のことだった。メリル・デイビスはこう感想を口にする。
「彼らのプログラムは文句なしに素晴らしかった。あの組の優勝に疑いを持った人はいなかったでしょう。良いものを見せれば、ジャッジはきちんと評価をしてくれるということの証明です。このスポーツにとって、素晴らしいことだったと思っています」
現在の採点方式になる前は、アイスダンスは、順位の入れ代わりが少ないことが何度も指摘されていた。予め順位が決まっているも同然ではスポーツとは考えられない、と長野オリンピック直後にはIOC関係者から公式に非難され、オリンピック競技からはずすべきという意見まで飛び出したことがある。
デイビス&ホワイトは一緒に滑り始めて17年目で、米国のアイスダンサーとしては最長のパートナーシップを誇る。彼らが世界タイトルを手にするまで、実に14年の歳月を要したが、いきなり頭角を現した新人に対して、2人は惜しみない賞賛を与えた。