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「消化試合」にせず日本はどう戦ったか。
ラグビーW杯、“最も大事”な80分間。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byAFLO
posted2015/10/17 10:50
イングランドへ出発する際「この10倍のファンに迎えてもらえるように」とエディーHCは発言していた。
行われたのは、「消化試合」ではない意味づけ。
実は日本は、この事態を事前に想定していた。サモア戦に勝利したもののBPを得られなかった時点で、8強進出の可能性は、スコットランドがサモア戦に勝点「2」以下(負けまたはBPなしの引き分け)で終わらない限り、断たれることになっていた。
そして「消化試合」になりかねない試合に対する意味づけを、日本代表は真摯に行った。
「このワールドカップで最も大事な試合です」とエディー・ジョーンズHCが言ったのは、アメリカ戦メンバー発表の席だった。この時点ではスコットランドとサモアの試合はまだ行われていない。
「日本がワールドカップで3勝をあげれば素晴らしいことだ。もし3勝して準々決勝に行けなかったとしても恥じることはない。3勝して準々決勝に行けない初めてのチームになる。2011年のフランスは1次リーグで2勝2敗でも決勝トーナメントに進み、決勝まで勝ち進んだ。だが2勝2敗でワールドカップを去るとしたら、それはアベレージでしかない」
リーチ「日本のラグビー界を盛り上げるラストチャンス」
リーチ主将の表現はもっと直接的だった。
「それで日本へ帰ることになったとしても、勝って帰るのと、負けて帰るのとでは全然違う。ここで負けて帰ったら、この2勝も『たまたま勝てただけ』と言われてしまう。今回のワールドカップは日本のラグビー界を盛り上げるためのラストチャンスだし、3勝して帰って、日本を元気にするのがオレたちの目標。そのためには、サモアとスコットランドの結果なんて考えても仕方ない。結果も聞きたくない。できれば知らないまま試合をしたいくらいだ」
南ア戦では終了直前、同点のPGチャンスを得ながら強行を選択して大逆転勝利を掴んだ。サモア戦では一転、BP獲得の可能性を減らしてでも確実な勝利を求め、23点差をつけていてもPGを狙った。ロマンに走るのでも、堅実一辺倒でもない、身体を張りながら深く考えるキャプテンは、戦う前の気持ちをそう語った。