ラグビーPRESSBACK NUMBER
「消化試合」にせず日本はどう戦ったか。
ラグビーW杯、“最も大事”な80分間。
posted2015/10/17 10:50
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
AFLO
プールステージ最後の試合は、特別なメッセージを発信することがままある。
1991年大会のプールステージ最後の試合は、日本vs.ジンバブエだった。日本は1試合大会最多の9トライをあげて勝った。「これがラグビーです。走ってボールをつないでトライを取る。日本はラグビーの素晴らしさを見せてくれた」。試合後の会見冒頭、司会を務めた大会役員は興奮気味にまくしたてた。
2007年大会のプールステージ最後の試合は南アフリカvs.アメリカだった。22歳、このW杯でデビューしたばかりのアメリカWTBタクズワ・ングウェニアは、世界最速ランナーと謳われるブライアン・ハバナを鮮やかに抜き去る50m独走トライを決め、世界に衝撃を与えた。
そして2015年のプールステージ最終戦は、B組の日本vs.アメリカだった。
最終戦を前に、順位は全て決まっていた。
キックオフを前に、B組のすべての順位は決まっていた。
初戦で南アフリカを破った日本は、続くスコットランドに大敗し、サモアに勝ったものの2勝1敗でボーナスポイント(BP)なしの勝点8。アメリカにBPつきの勝利を得ても最大勝点は13にとどまる。
日本に敗れながらその試合でBP「2」を得ていた南アはその後、サモア、スコットランド、アメリカを破り、勝点を16まで伸ばし、1位抜けが決定。
決勝トーナメントの残り「1」枠は日本とスコットランドが争っていたが、前日にスコットランドがサモアを破り、勝点を「14」に伸ばした時点で日本は追いつけなくなり、スコットランドが2位で準々決勝進出。日本は3位が決まった。
初戦でアメリカを破っていたサモアは、スコットランド戦でBP「2」を加え、勝点6。ここまで3戦全敗のアメリカは、日本から最大勝点「5」を奪っても、4位のサモアには届かない。つまり5位=最下位が決定していた。
ラグビーワールドカップでは順位争いの興味を深めさせるため、1次リーグ各組2位までに決勝トーナメント出場の道を開くほか、各組3位には次回大会の出場権獲得という特典を与えている。だがこのB組は、その3位もすでに日本に決まっていた。