今季限りなのか、来季も投げるのか。

　現役に対するこだわりは強い。だが、今の彼が野球人生の“最後のマウンド”に向かっているのは間違いない。自分の未来を冷静に見つめる、もう一人の渡辺俊介が、そこにはいる。

「僕は最初からできなかったことの方が多いんで、できない人ができるようにするためにどうしたらいいのかっていうのは、元々の能力が高くてっていう人よりは教えられる。こうやったらうまくなったとか、こういう考えもあるんだよと、日本とはまた違った角度から、アメリカやベネズエラで2年やって来たことを今後、生かせたらいいなと思います」

　渡辺はこの2年間で、彼が出来る限りのベストを尽くした。年齢を重ねてから渡米したほかの多くの選手同様、懐疑的な視線を集めたこともあったが、それは彼にとっては「厳しいのは最初から分かっていたこと」となる。

「ここに来たことは絶対プラスになる。どこにいても毎日、そう思っていろんなものを見てきたつもりです。アメリカに来る時、残りの野球人生は将来のために使いたいなっていう気持ちもありました。メジャーだったらとか、日本だったらとかよく言われますけど、そういうことじゃないんですよね」

　渡辺は今、ベネズエラのマウンドに上がっている。それが現役として最後のマウンドになるのか、それとも来季もどこかのチームで、現役のサブマリン投手として投げているのか。それは誰にも分らない。分かっているのは、彼はこれからも未来に向かって、しっかりと着実に歩み続けていくということだけである。

追記：残念ながら、渡辺はベネズエラ・リーグで1試合に登板したのみでリリース（自由契約）になり、現在は日本に帰国している。