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1人あたり370万円で“家庭教師”を。
オーストリアサッカーが伸びた理由。

posted2015/10/12 10:30

 
1人あたり370万円で“家庭教師”を。オーストリアサッカーが伸びた理由。<Number Web> photograph by Getty Images

オーストリア代表のアラバ(バイエルン)は育成プログラム「プロジェクト12」の第1期生。個人指導に特化した同プログラムからドラゴビッチ(ディナモ・キエフ)、グレゴリシュ(ハンブルガーSV)などを輩出した。

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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「過去に比べて、個人練習の必要性が高まってきた。選手ごとに、性格、年齢、課題、ポジションに応じたメニューを用意すべきだ」

ヨアヒム・メシュター教授(ケルン体育大学)

 日本サッカーの育成力は衰えている――。

 なかなか進まない日本代表の世代交代だけでなく、リオ五輪を目指すU-22世代のタレント不足を見ても、それは明らかだろう。本コラムで「育成力に勝るのは部活か、ユースか」というテーマを扱い、学校教育の大切さを訴えたときに大きな反響があったのも、育成衰退への危機感が共有されているからに違いない。

 では文武両道の他に、育成力を再生するために何が必要なのか? ひとつ参考になりそうなのが、オーストリアサッカー界の取り組みだ。

 オーストリアは1978年から20年間、W杯に6大会中4大会出場したが、フランス大会後は1度も出場権を勝ち取ることができていない。EUROにいたってはスイスと共催した2008年大会しか出場したことがなく、その記念すべき大会でも1勝もできずにグループリーグで姿を消した。

 それが今、急激に力を伸ばし始めている。

個性豊かな選手を生んだ育成計画。

 EURO2016の予選のG組では、ロシア、スウェーデン、モンテネグロを押しのけて首位を独走しており、9月8日にスウェーデンに4-1で圧勝し、早々に本大会出場を決めた。

 国際的に有名なのはアラバ(バイエルン)くらいだが、創造力のあるユヌゾビッチ(ブレーメン)、闘争心溢れるバウムガルトリンガー(マインツ)、運動量の多いクライン(シュツットガルト)など、個性豊かな選手がそろっている。

 この躍進の一因となったのが、オーストリアサッカー協会と同国のスポーツ省(正式名称は国防・スポーツ省)が共同で立ち上げた育成計画、「プロジェクト12」だ。

 一言で言えばエリート支援プログラムである。12という数字には「ピッチにいる11人に続くタレントを育てる」という願いが込められている。

【次ページ】 「個人指導」に特化しているのが最大の特徴。

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