サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
大勝の裏で遂に起こった「政権交代」。
西川周作が発揮した集中と、叱責。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/09/11 10:40
Jリーグのベストイレブンに3年連続で選ばれている西川周作も、代表では川島永嗣の壁に跳ね返され続けてきた。ついに手にしたチャンスを、つかみ損ねるわけにはいかない。
監督に派手に叱責された前半11分。
試合中、テクニカルエリアでゲームを見つめるヴァイッド・ハリルホジッチ監督から、派手に叱責されたシーンがあった。前半11分である。左サイドからのFKをキャッチしたが、すぐにボールをフィードできなかったからだった。
西川は苦笑いを浮かべた。「怒られてしまいましたね」と、言葉をつなぐ。
「キャッチした後に、相手につかまれたんです。2人ぐらいに。それで、投げることができなくて。監督の言いたいことは分かりましたし、自分もボールを持つよりできるだけ早くさばいて、味方につけたい意識はあります。目的はゴールなので」
失敗と言うには、少しばかり気の毒なプレーである。だが、指揮官の要求に応えられなかった悔しさを、西川は次なる場面で生かす。
5-0で迎えた65分だった。今度は右サイドからのFKをキャッチし、瞬時に左サイドの香川へフィードする。香川と並走した本田が左サイドを駆け上がり、カウンターが成立した。
西川の素早い切り替えと背番号10の動き出しが、鮮やかにシンクロしたのである。かつて川口能活と中田英寿が、あるいは川口と中村俊輔が見せてきた無言の紐帯ともいうべき連携は、日本代表に久しく欠けていたものでもある。
「早いフィードは監督からも言われていることで、チャンスがあればキックでもスローでも、すぐにボールをつなぐようにしています。真司がうまく走ってくれたあの場面のような狙いを、つねに持ってやっていきたいですね」
相手が強いほど、西川の長所は生きる。
ハリルホジッチ監督が目ざす「タテに速いサッカー」は、GKにも攻撃性能を問う。フィールドプレーヤーに見劣りしない技術を持ち、高精度のキックとフィードを持つ西川の特徴は、チーム戦術に無理なくマッチする。
「これから相手が強くなってきて、前からプレッシャーをかけられたときに、自分の長所がもっと生かせると思います。どんな相手でも自分のパフォーマンスを安定して出せるように、ホームでもアウェーでも関係なくパフォーマンスを発揮できるように、メンタル面も鍛えていきたいと思います」