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女子バスケ、リオ五輪決定までの道。
司令塔・吉田亜沙美の“3度目の正直”。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byXinhua/AFLO
posted2015/09/10 10:40
「(リオ五輪では)メダルを獲りたい! 女子バスケットをもっとメジャーにしたい」と宣言している吉田。
膝の不安を感じさせなかった司令塔の対応力。
アジア屈指の司令塔がよもやのアクシデントに見舞われたのは、昨年2月15日に秋田県立体育館で行なわれたWリーグ・富士通レッドウェーブ戦だった。
自ら打ったシュートが落ちたところへリバウンドに飛び込み、着地の際に左膝を負傷した。診断は前十字じん帯断裂の大けが。試合に復帰したのは昨年12月だった。
“ピボット(軸足を使った回転運動)”という動きのあるバスケットボール選手にとって、膝は泣き所だ。たぐいまれなる運動能力を生命線としてきた身長165cmの小柄な吉田にとっては、以前のようなプレーを取り戻すことができるかどうかという不安を抱えたこともあるかもしれない。
加えて、アジア選手権は8日間で7試合をこなすハードなスケジュール。公式戦復帰からまだ8カ月ということもあり、大会前は「まだゲーム体力が戻ってきていない。(フル出場の)40分間出ることに関しては不安がある」と話していた。
ところが蓋を開けてみれば、心配を吹き飛ばすようなプレーの連続だった。
意表を突くパス、鋭いドライブ、外角シュート……。
吉田のゲームコントロールは冴えわたり、日本は脚を使った粘り強い守備からの速攻でリズムをつくり、トランジションゲームで白星を重ねた。さらに、ハイスコアゲームもロースコアゲームもものにするという見事な対応力まで見せた。
「守備からブレイクというアップテンポのバスケをすることが日本のキーになる」(吉田)と話していたとおりの試合内容だった。
アトランタ五輪で活躍した加藤貴子が語る。
'96年アトランタ五輪(20年ぶりの五輪出場で7位入賞)に中心選手として出場した加藤貴子(現姓・中原)さんは、「吉田選手のパスは『そこが見えているのか』というところに出る。ドライブも切れるし、リバウンドの嗅覚もある。以前よりも体格がガッチリして、すごくトレーニングをしていると感じる。精神面でもケガをする前よりたくましくなったのではないか」と称賛した。