松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

自分以外のことには不満を言わない。
松山英樹が欲する、優勝と12億円。 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2015/09/09 10:40

自分以外のことには不満を言わない。松山英樹が欲する、優勝と12億円。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

ティショットもアイアンも、松山英樹のショットは確実に上向いている。豪快なショットが放たれるたびに、観衆から「マツヤーマ」の声が飛び交った。

何かが上手くいくと、何かが上手くいかない。

 けれど、何かが上手くいくと何かが上手くいかなくなるのがゴルフの妙。せっかく見事なロブショットで寄せたのに、そのあとの短いパットを外し、スコアを落としていった。干上がったグリーンのスピードに「うまく合わせられなくなって、パットが入らなくなった」。

 15番で4メートルのパーパットを外してボギーを喫すると、17番ではロブショットで2メートルに寄せながら、それを外してボギー。パー5の18番ではグリーン奥のラフから見上げるほどの高さのロブショットでピン10メートルへ。うねりと段が複雑に絡み合う18番グリーン上のピンに向かって、うまく打ったロブショットではあった。だが、パットは2度もカップに蹴られ、4パットのダブルボギーで終戦となった。

 優勝争いは終始、蚊帳の外。終わってみれば、優勝したリッキー・ファウラーとは11打差の25位。あんなに楽しみにしていた松山の最終日は、悔しい終わり方になった。

最終戦出場より、優勝こそが嬉しい。

 だが、ホールアウトした松山の表情は明るかった。

「上がり4ホールで4オーバーは悔しいけど、それ以上にいい感覚が増えている。ショットが上向いていることのほうが(優勝できなかったことより)僕の中では大きい」

 ここ1カ月ほどの間、ショットの不調を感じ続けてきただけに、好感触が得られ始めたことのほうが大きいと言った言葉にウソは無かったはず。

 けれど、根っからの戦士である松山のこと。いいスイング、いいショットは彼の目的ではなく、目的を達成するための手段にすぎない。その手段が上向いたことが、彼にとって一番の喜びであるはずはない。

 このプレーオフ4戦を戦う上でも、同じ論理が当てはまる。プレーオフはフェデックスカップのポイントランクに従い、人数が絞られていくサバイバルゲームだ。そして、最終戦が終わったとき、年間で最大ポイントを稼いだ総合優勝者には10ミリオンのビッグボーナスが贈られるというドキドキ、わくわくの仕掛け。しかし松山には、今そのプレーオフを戦っているという感覚は無い。

 それもそのはず。プレーオフ開幕前から第3戦までの出場が決まっていた松山にとっては、次戦へ進むこと自体は「意識せずにプレーできる」状態だった。

 今大会の25位により、最終戦のツアー選手権出場も確定した。だが、それでもワクワクはしないという。

「2年連続で入れたのはうれしいけど、そこ(最終戦)に入るためにゴルフをしているわけじゃないし、そこに入ることより、優勝のほうがうれしい」

 やっぱり優勝。目指すは優勝。優勝の二文字こそが、彼の究極の目標であり、モチベーションであり、すべてだ。

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