松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
自分以外のことには不満を言わない。
松山英樹が欲する、優勝と12億円。
posted2015/09/09 10:40
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
プレーオフ第2戦、ドイツ銀行選手権3日目を終えたとき、松山英樹はうれしそうな笑顔を見せた。
「首位と4、5打差で最終日は久しぶりなので楽しみです」
今季の松山は開幕戦のフライズコムオープン3位を皮切りに、トップ5入りが6度もあった。いずれも優勝をすぐそばに感じながら最終日に挑んだが、勝利にはわずかに届かず、惜敗。そして、6月のメモリアル・トーナメントで5位になったのを最後に、優勝争いからも遠ざかっていた。
だが、ドイツ銀行選手権では3日目を終えて首位と5打差の6位へ浮上。ほぼ3カ月ぶりに現実的に優勝を狙える位置で最終日を迎えようとしている。その状況を松山は素直に喜んでいた。
リカバリーに見えた小技の進歩。
いざ、最終日。1番を無難にパーで収めると、2番でバーディーを先行させ、順調に滑り出した。
8月のブリヂストン招待のころから乱れ始めたショットは、先週より今週、今週も初日より2日目、3日目、最終日へと着実に上向き始めていた。ショットした直後に首を捻る回数も激減。「いい感じになってきた」
だが、3日目ごろから硬さを増したグリーンは、最終日はさらに硬くなり、グッドショットを打ってもボールをグリーン上にホールドしてはくれなくなった。せっかく好感触のショットを打っても、わずかにグリーン外へこぼれる場面が増え、そんなとき松山は深いラフから目の前のピンへ高い球で寄せるロブショット、フロップショットを多用した。
そもそもロブショットは、難度の高いリスキーな技だ。だが、その技を大観衆の真ん中で、しかもプレーオフという大事な大会の決勝ラウンドで積極的に利用していたのは、それなりに練習を積み、自信もあったからのはず。
「3日目も最終日も、ロブ、いっぱいやってたよね」と讃えても、松山はそれには喜ばず、「だって、やらなきゃいけないところに外しちゃうから、やらなきゃいけなかったっすよ」と半分、照れながら言い返してきた。だが、そこには確かなる彼の小技の進歩が見て取れた。