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ローマのジェコ&ピアニッチが凄い!
欧州の移民問題に彼らは何を思う。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/09/09 10:30
マンチェスター・シティからレンタルでローマへやってきたエディン・ジェコ(右から2番目)。昨季は出場機会が減っていたが、プレミア屈指の点取り屋だったことは間違いない。
ブッフォン「今季のローマはかなり強い」
3日、FWジェコとMFピアニッチは、ラツィオDFルリッチらと共に、ボスニア代表としてEURO2016予選を戦った。
グループBの2位ベルギーを相手にジェコのへディングシュートで先制したが、瞬く間に逆転され、結局1-3で敗れた。グループ4位のボスニアのEURO本戦出場は厳しくなったが、実際に対戦したベルギー代表MFナインゴランは、ローマで新たな同僚となったFWの爆発に大きな期待をかける。
「ジェコには、ボールを足元に抑えるテクニックとパワーがある。この先も、ユーベやベルギーを相手に決めたゴールをたくさん決めてくれれば、スクデットは可能だ。2年続けて2位なんだから、そろそろスクデットを信じてもいいだろう?」
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ローマの強さが本物かどうかを見極めるには時期尚早だと思うが、ユベントスの主将ブッフォンはすでにライバルの実力を認めている。敗れたゲームでは、ボール支配率で62.7%という高い数字を記録されてしまった。
「強固な精神と自分たちを信じる力がローマにはある。今季の彼らはかなり強い」
欧州を揺るがす難民を、彼らはどう見ているか。
今、新たな難民問題が欧州を揺るがしている。
シリア内戦により、国を捨てた大量の難民が西欧社会(≒サッカー強国)目掛けて、昼夜を問わず押し寄せ始めた。何千、何万という人びとが、死に物狂いで経済大国ドイツとフランスを目指す未曾有の事態に、EU各国は大きな試練のときを迎えている。
イタリアは今年に入り、北アフリカ沿岸からゴムボートで地中海を渡ってくる難民をすでに11万6000人も受け入れているが、EUからはさらに2万人の受け入れを求められている。
人道的救済が賛美される一方、不法移民による凶悪犯罪が近年頻発しているのも事実で、大量難民受け入れの是非は今、最もデリケートな社会問題だ。5日、ドイツとオーストリアが国境を開放し、イタリアのレンツィ首相も難民の受け入れ姿勢を強調したが、野党党首ベルルスコーニが「次の選挙キャンペーンのための人気取りだ」と攻撃するなど、EU全体はおろか国内の足並みですら揃えるのは難しい。
ピアニッチやジェコは、大海の荒波に揉まれ、食べ物もなく線路で眠る子供たちを、どんな心境で見ているだろう。彼ら自身がそうだったように、未来のジェコやピアニッチが、難民の子供たちの中から出てこないとも限らない。
「祖国を後にしたばかりの頃、俺にとってサッカーは、とても、とても大事なものだったんだ」
ピアニッチは、言葉と右足に力を込める。セリエAの旧ユーゴ出身者たちのプレーは、現在の欧州へ何ごとかを訴えかけている。