世界陸上PRESSBACK NUMBER
十分な伸びしろ感じたサニブラウン。
ボルトとの勝負は「来年に!」と明言。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2015/08/27 12:00
長いストライドが特徴的な走り、今後の期待が大きいその伸びしろ、それに取材で見せる臆すること無い性格も魅力だ。
ガトリンらトップクラスの選手と競いあったという糧。
準決勝は、サニブラウン本人も言うように、疲労から、予選のような走りにはならなかった。
さすがにそれは、いたしかたない。
それ以上に、準決勝まで上がったことで得られた財産の大きさをサニブラウンは語る。
「雰囲気を感じられて、悔しいというより、やりきった感、達成感が大きいです」
自己記録で言えば、準決勝に勝ち上がった他の選手たちは皆、サニブラウンより格上の選手たちだ。その中にまじり、ガトリンらまさにトップクラスの選手と大観衆の前で競い合った。その体験こそ、糧である。
また、世界選手権ではサニブラウンの特性をあらためて知ることができた。
伸びしろに加えてメンタルも魅力。
伸びやかに見えた予選について「後半は悪い癖が出てうまく足が回りませんでした」と言うように、フォームにはまだまだ改善点がある。荒削りではある。それでもタイムを出せる原動力となっている、240cm弱と日本の選手ではトップレベルにある大きなストライドの走りはやはり魅力的だ。まだ筋力トレーニングを本格的に行なっていないことを考えれば、そのストライドは187cmの身長と身体の使い方がもたらしているし、ピッチ数の向上も含め、これからののびしろを感じさせた。
何よりも、大会で伝わってきたのは、臆することのない性格だ。
海外のメディアからも注目を集めたサニブラウンは、実際に取材を受けもしたが、英語でやりとりし、いつもと何ら変わらぬ態度だったという。予選での走りをはじめ、そのメンタルもまた魅力であることを確認させられた。
走りから、性格から、これまでにないスケール感を抱かせる。サニブラウンの世界選手権はそういう大会だった。
サニブラウンは大会前、「(ウサイン・)ボルトと走りたいです」と語っていた。実現できなかったことについて、「来年に持ち越しです」と答えている。来年とは、リオデジャネイロ五輪である。