セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
前半にアクションを起こすはずが……。
本田圭佑、開幕戦で奪われた“機会”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/08/24 16:00
プレシーズンを好調で終えて迎えた開幕戦だったが、本田圭佑は突然のアクシデントでチーム事情から交代を余儀なくされた。トップ下として臨む今季は波乱含みのスタートだった。
本田にとっては「さあここから」という時間だったはず。
同点に追いつくことを考えれば、後半がまるまる残っている時間帯で、プレースタイルの異なる2トップのうちいずれかを引っ込める手はありえなかった。本田のアシストを諦めても、運動量豊富なL・アドリアーノとフィジカルのあるバッカに左右からクロスが入れば、相手ゴール前で合わせられる。
ミラン・ベンチは先制された直後に本田を呼び寄せ、DFサパタとの交代を促した。チームの陥った状況を素早く察知した本田は、すぐに交代を受け入れ、駆け足気味にベンチへ下がった。
本田の今季開幕戦は、39分間で唐突に終わってしまった。
前半のうちに、一度は自ら仕掛けていたはずだった。少なくとも本田は、どんなに不利な試合展開でも、先発した試合では前半のうちに、必ず一度は自分の攻撃のアクションを仕掛けようとしてきた。
2トップへのスルーパスは出さず終いだったが、前の試合の出来がよかっただけに、さあここから、という時間帯での交代は、本田にとってはさぞ無念だったに違いない。
やや残暑が匂う夏の夜に、ベンチの彼の周りだけが氷点下になったように動きを止めてしまった。
20歳と21歳、2人のCBが試合を壊してしまった。
後半に入ると、地を這うスピーディなパスを使ったフィオレンティーナのカウンターが冴えを増した。
9分、左サイドを破られたDFロマニョーリが、ドリブルで切り込んできたMFイリチッチの足を刈ってPKを献上すると、これを決められて試合の趨勢は決した。
退場したエリーは21歳、PKをとられたロマニョーリは弱冠20歳で、ミランの新指揮官から大抜擢を受けての開幕スタメンだった。
ミハイロビッチのゲームプランは、自ら信頼して起用した若いセンターバック2人の未熟さによって完全に崩れた。
ベンチを見渡してみても、戦術的に劣勢を挽回できる手駒を彼は持っていなかった。
新監督パウロ・ソウザに率いられたフィオレンティーナは、2部クラブのペルージャとは明らかにレベルが違っていたのだ。