セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
パウロ・ソウザがフィオを甦らせる。
「やつの試合はどれも退屈とは無縁」
posted2015/08/17 10:40
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
猛暑が続くイタリアで、フィオレンティーナが夏を謳歌している。欧州の強豪たちをプレシーズンマッチで次々に撃破しているのだ。
8月2日に、欧州の覇者バルセロナを本拠地アルテミオ・フランキに招いて2-1の金星を上げると、続く5日にはロンドンに乗り込んで、プレミア王者チェルシーに1-0で土をつけた。
欧州スーパー杯を控えるバルサはFWメッシとFWネイマールを温存していたし、プレミアリーグ開幕戦直前だったチェルシーの先発はリザーブメンバーだったが、それでもフィオレンティーナのプレー内容が良かったことには変わりない。彼らは、大物を食った2連勝の前にもポルトガル王者ベンフィカを破っている。
今季から就任した新監督パウロ・ソウザにとって、新シーズンへの手応えは上々だ。
「チームがだんだん強くなっているのがわかる。たとえテストマッチであっても、成果を出すのは重要だ」
ユーベ時代の印象が強いのか、ファンからは拒否反応も。
オールドファンなら、パウロ・ソウザの名を聞いて、欧州を席巻した'90年代中盤のユベントスを思い出す向きも多いのではないか。
'94年夏にイタリアへやってきたソウザは、パーマヘアを振り乱しながらボールを躍らせた。9年ぶりのスクデット獲得と翌年のCL優勝に決定的な役割を果たした。常勝ユーベの一員にふさわしい、職人肌の選手だった。
彼は後にインテルやパルマでもプレーしたけれど、名将リッピの下で活躍した印象が強いせいか、ユーベを忌み嫌うフィレンツェの町で、パウロ・ソウザの就任に拒否反応を示す者が出たのも無理からぬ話だ。
「そう言われても、私は('97年にドルトムントの選手として優勝した)CL決勝で、ユーベを痛い目に遭わせたこともあるんだがな」
新指揮官は就任会見でそう苦笑し、「支持してもらうには、結果を出すまでさ」と気負わず述べた。昨季、やはり指導1年目でバーゼルをスイスリーグ優勝に導いたとはいえ、戦術の国が新参監督に優しくないことは承知の上だった。