「厳しい戦いになるだろうと考えていた」

　JFLで通算200試合以上に出場してきた鳥養は言う。

「上（J1やJ2）を経験している選手は少なく、下（JFL）から上がってきた選手が多い分、ここでチャレンジしたいという気持ちの選手が多い。J3には高原（直泰／相模原）さんのような選手もいるけれど、胸を借りるわけではないが、フレッシュな気持ちで戦えているのがこういう結果につながっているのだと思う」

　J1でプレー経験を持つような“名前のある”選手を獲得することは、一見派手な補強に映る。だが、新加入の山口がこうした顔ぶれで臨み、J3を独走していることは、今後Jリーグを目指すクラブがチーム作りを考えるうえで大いに参考になるのではないだろうか。

　今季開幕前、鳥養は初のJ3参戦に際し、「厳しい戦いになるだろうと考えていた。一度も首位を渡さずにここまで来られるとは思ってもいなかった」という。だが、今では「自信を持ってやれている」と十分な手応えを感じられるまでになった。

　首位に立ってからもペースダウンすることなく、ジワジワと2位との差を広げていく山口。その歩みは「2－0になっても勝ち逃げするようなことはせず、あくまで3点目を取りに行く」（岸田）というチームの基本姿勢を表しているようでもある。

　また選手たちにとっては、クラブがJ2ライセンスを申請し、来季のJ2昇格が具体性を帯びてきたこともさらなるモチベーションとなっている。山口の誰もがこのままの勝ち点差を保って逃げ切ろうなどとは、つゆほども考えていないはずである。

　驚異的な得点力を誇るルーキークラブは「前へ前へ」の姿勢を貫き、J2昇格まで走り切ろうとしている。