サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
取材エリアで珍しく見せた「迷い」。
槙野智章は今大会をどう感じたか。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/08/11 10:40
最後尾で終始声を出してチームを鼓舞していた槙野智章だったが、チーム全体の状況を変えるまでには至らなかった。
昨年浦和で覚えた「ゼロで終えたときの達成感」。
南アフリカW杯こそバックアップメンバーにとどまったが、年齢や状況を考えれば順調なサッカー人生。しかし、これからという時期にアクシデントに見舞われた。アルベルト・ザッケローニ監督の主要メンバーが固まるきっかけとなったカタールでの'11年アジア杯で、ケガのために現地で代表から離脱。その後も何度か呼ばれはしたが、定着するには至らなかった。
ブラジルW杯に向けてのラストチャンスとも言えた2年前の東アジア杯では、攻撃力を買われて左サイドバックに抜擢され、優勝に貢献した。しかし同じポジションのライバルには長友佑都を筆頭に酒井高徳もおり、本職にはやはり太刀打ちできなかった。何を武器としてポジション争いに挑むべきか、という悩みも大きかった。
そんな槙野の意識に変化が起き始めたのは昨年だ。サンフレッチェ広島からGK西川周作が加入したこともあり、守備力が強化された浦和レッズで、7試合連続無失点のJリーグ新記録をマーク。「ディフェンダーとしてプレーして、ゼロで終えたときの達成感を初めて覚えた」のだ。
センターバックとして、代表に招集。
その流れの中で、今年3月に緊急登板となったハリルホジッチ監督にセンターバックとして招集された。
「あれがターニングポイントだった。センターバックで呼ばれたということは、対人守備の強さ、あるいはゲームをコントロールする上でのコーチングというところを見てもらえているのかなと感じた」
ハリルホジッチ監督には、欧州組もいた初戦のチュニジア戦からセンターバックで先発起用され、ラインコントロールも任された。槙野が意気に感じないわけがなかった。所属の浦和に戻ったときも、代表で与えられたフィジカル強化の“宿題”を積極的に行なった。意識もフィジカルも向上した結果、1対1の対人守備はますます強くなり、Jリーグでは今季ほぼ無敗となっている。