錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
グランドスラムの舞台はアメリカへ。
錦織圭は真夏のシリーズをどう戦う!?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/07/31 10:30
いつもファンサービスを忘れない錦織。世界のトップアスリートになりながらも、その素顔はいつも屈託がない。
錦織はチャリティマッチでファンと触れ合う。
今回の錦織の場合は、1週間ほど日本で過ごしたあとアメリカに戻り、まずカリフォルニアのニューポートビーチで、マイケル・チャンが家族とともに主催するチャリティーイベント『マイケル・チャン・テニスクラシック』に参加した。一般のトーナメントやクリニックなども行なうイベントだが、錦織が登場したのはチャンと組んでのダブルスのエキシビションマッチ。
チャリティー活動については、「自分にできることは、テニスを通じてファンの人たちと触れ合うこと。少しでも楽しい気持ちになってもらえて、その収益が少しでも人のために役立つならうれしい」と錦織は前々から言っている。あのウィンブルドンでの出来事のあとだから、リラックスしたテニスとファンとの触れ合いの中で得たものはあったに違いない。
ただ、こういうショー的要素の強いイベントになると、錦織の魅力が発揮しきれていないように時折感じるのは私だけだろうか。
理由は明確だ。
たとえば今回の対戦ペアは34歳テイラー・デントと、39歳のフィリピン人セシル・マミートだった。錦織がきっかけでテニスファンになった人たちには馴染みがない名前かもしれないが、2010年を最後に引退したデントは、現役時代はビッグサーブが武器で最高21位までいったアメリカ人。173cmと小柄なフィリピンのマミートは元世界72位だ。錦織が本気でプレーすればレベルが違いすぎるだろうし、かといって子供や素人を相手にするような手抜きでは、エキシビションなのに肝心のお客さんを楽しませることができない。そのあたりのさじ加減が難しい。
エンターテインメントに徹するのは難しい!?
かつてウィンブルドンや全米オープンのファイナリストにもなったオーストラリアのマーク・フィリポーシスは、引退した直後に参加したシニアツアーで「まだ僕はあそこまでテニスでふざけることができない。プライドが邪魔するんだ」と、全力でおふざけに徹する先輩プレーヤーたちのパフォーマンスに脱帽していた。おちゃらけと手抜きは違って、テニスコートで金をとるおちゃらけは、高いスキルがなければできないのである。
錦織もまた、一昨年のシーズン後、有明で元王者ジョン・マッケンローとのエキシビションマッチを行なったあと、エンターテイナーとしてのマッケンローから見習うところはあるかと問われると、その力量に感嘆しつつも、「僕はちょっとあそこまでのキャラはまだ確立できない。まあ、引退してから……ですかね」と、現役中のおちゃらけ封印を宣言した。