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世界水泳はリオ五輪前最後の大舞台。
伊藤華英が萩野不在の日本を語る。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2015/07/24 10:30
ながらく世界のトップクラスで泳ぎ続けてきた入江陵介だが、意外にも世界選手権、五輪では金メダルがない。誰よりも表彰台の頂上を求めているのは本人だろう。
女子では渡部が不動のエースだが、他にも……。
伊藤は入江以外にメダルを狙える選手として瀬戸大也、女子では渡部香生子の名をあげる。
瀬戸は前回の世界選手権の400m個人メドレーで金メダルを獲得。今大会は同種目をはじめ、4種目にエントリーしている。
平泳ぎ2種目、200m個人メドレーに出場する渡部は、昨年のアジア大会で金2、銀3のメダルを獲得するなど成長著しい選手で、女子のエース格と言ってよい存在だ。
伊藤は続ける。
「女子は渡部選手に注目が集まりがちですが、平泳ぎ200mでは金藤理絵選手も楽しみな選手です。日本選手権の400m個人メドレーで優勝して初めて世界選手権代表になった清水咲子選手も『化ける』可能性があります。初めてならではの怖いもの知らずで行ってほしい。ロンドン五輪に出場した自由形の内田美希選手は、オリンピックのあとから平井伯昌コーチの指導を受けるようになりました。平井コーチに鍛えられたことで、精神的にも成長が見られます」
欠場の萩野にとっても、今大会の成績は契機となる。
楽しみな選手たちの名前が次々にあがる一方で、大会を前に、欠場をよぎなくされた選手がいる。萩野である。フランスで合宿していた6月28日、自転車で練習会場へ向かう際に転倒、右肘橈骨頭骨折で全治2カ月の怪我を負った。ロンドン五輪でのメダル獲得を皮切りに、その後の活躍で日本競泳界の中心的存在になった萩野が、重要な大会に出られないことになった。
ただ伊藤は、今回の欠場が日本の水泳界にとっても、萩野にとってもプラスになる可能性があるという。
「『萩野がいない分まで』と、出場する選手たちはきっと頑張ると思うんです。その姿を見て、萩野選手は悔しい思いをするはずです。それがこれからのエナジー、内面的なモチベーションになる。彼は責任感が強いので、今まではまわりのことを考えつつ自分が頑張らないといけない、と考えている面がありましたが、芯からやる気が芽生えると思います。実はフランスから帰国後、萩野選手に『休みの間、出られないうちにできることはたくさんあるよ』と伝えました。頭がいい選手なので、やるべきことは十分に分かっていると思います。リオへ向けて、強くなって帰ってくることを期待したいですね」