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世界水泳はリオ五輪前最後の大舞台。
伊藤華英が萩野不在の日本を語る。
posted2015/07/24 10:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
7月24日(以下、現地時間)、世界水泳選手権がロシア・カザンで開幕する。
さまざまな競技が行なわれる中でも、注目はやはり8月2日から始まる競泳だ。
「今回は大事な大会ですね」
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北京、ロンドンの両五輪や世界選手権などに出場、長年にわたり第一線で活躍してきた伊藤華英は今大会の位置づけをこう語る。
現役選手であった頃に、オリンピックへ向けた緊張感あふれる過程を何度も味わってきた。その経験から、今大会の重要性をこのように説明する。
「ロンドン五輪から、『Road to Rio』でつながってきて、これまでさまざまなことを試してきたと思います。それこそ、食事やアップの仕方まで、すべて。そして今回は五輪前で実験ができる最後の機会ですし、正解をみつける試合にもなります。しかもオリンピック前年。世界も本気度が上がってきているときでもあります」
どの選手にとっても大切な舞台となるが、その中で注目する選手として伊藤はまず入江陵介の名前をあげた。
萩野の台頭に内心穏やかではなかったはず。
入江は、ロンドン五輪では背泳ぎ200mとメドレーリレーで銀メダル、100mで銅メダルを獲得した背泳ぎの第一人者である。
しかしロンドン五輪翌年の世界選手権では個人種目でメダルを獲れないなど、苦しい時期もあった。
伊藤はこう解説する。
「そもそもオリンピックというのはヘビーな大会で、大会のあとは疲労があったと思います。その中で、ロンドン五輪の個人メドレーで銅メダルを獲得した萩野公介選手が背泳ぎにも挑戦することになり、入江選手の気持ちは穏やかではなかったと思います。これまでは世間の注目は自分に向いていたのに、どうしても萩野選手がクローズアップされるようになってしまった。自分の立ち位置が変化していくことには苦しんだと思います」
だが、最近は心境に変化が見られると伊藤は語る。
「今回は入江選手がチームのキャプテンになったので、リーダーシップを取ってミーティングを開いたりしていると聞いています。発言内容もだいぶ変わってきました。以前は『(北島)康介さんを見習っています』というような言葉であったり、自分自身のことを話すことが多かった。
でも今は、『こういうところを見てください』と後輩選手を紹介したり、北島康介を引き継ぐ存在になってきたと感じています。自分はどういう選手でいればいいのかを考えてきて、今はとてもいい精神状態だと思う。たくましさが増しました」
苦しんだ時期を経て一回り強くなった入江の泳ぎに注目したい。