松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が全英で進んだ“一歩分”。
三歩進んで二歩さがるメジャーの道。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byMaki Uchida
posted2015/07/21 11:20
セント・アンドリュースでの全英オープンは初体験だった松山英樹。2日目には優勝したザック・ジョンソンのベストスコアと同じ66を記録し、世界トップクラスの力を改めて証明した。
勝利もチャージも、追うと陽炎のように消える。
穏やかなフォローだった風は、9番から向きを変えたバック9、とりわけ松山のゴルフが暗転し始めた12番からは強いアゲンストになった。逆風の下で喫した3つのボギーは痛かった。バーディーを1つも奪い返せなかったのは無念だっただろう。
「10番を終わって11アンダーまで行ったけど、そこから逆に3つオーバーしてしまった。11番からは4日間ともスコアを伸ばせなかった。コース的にも耐えきれなかったのか。まだインを攻略する力がないのかな。スコアにつながらなかった、残念です」
勝利も、チャージも、追いかけたら陽炎のように消え去り、かくして松山のメジャー初制覇の夢は、またしても叶わず終わってしまった。
2011年のマスターズから、メジャーでは浮き沈み。
振り返れば、松山が初めてメジャーの舞台を踏んだ2011年マスターズは、いきなりローアマの栄誉に輝くサクセスだったが、アマチュアのまま挑んだ2度目のマスターズは54位に沈み、悔し涙を流した。
プロ転向した翌年、2013年に挑んだメジャーは全米オープン10位、全英オープン6位の大活躍。しかし、2014年はメジャー4大会すべてでパッとしない順位に終わった。
そして今年は5位になったマスターズでも、18位になった全米オープンでもこの全英オープンでも、優勝の二文字を現実的に意識できるゴルフを披露し、日本のみならず世界のゴルフ界が、たとえ瞬間的であっても、彼の勝利を予感した。
この5年間、松山のメジャー大会における成績は、向上してはやや後退してきた。松山が目指すメジャー優勝は、追いかけては遠ざかるシロモノだ。向上しては、やや後退。けれど、その中で少しずつ前進している。
「何かが足りないから勝てない。やっぱりパッティングが大きいところを占めてくる」と、技術の向上、パットの向上を最優先する姿勢は変わらない。だが、それだけではないと松山は言う。
「ショットもパットも、嫌だなと思うところでしっかり打ち抜く心の強さも必要だと思う。それは、試合をやりながらじゃないとなかなか磨けない。優勝争いしながらじゃないと磨くのは難しい」
だから、夢にまで見る勝利が近づいては遠ざかってしまっても、幻と化してしまおうとも、どんなに悔しくても苦しくても、走ること、目指すことをやめるわけにはいかない。走ることに疲れ、息切れしてきたら、スピードダウンして歩けばいい。