松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が全英で進んだ“一歩分”。
三歩進んで二歩さがるメジャーの道。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byMaki Uchida
posted2015/07/21 11:20
セント・アンドリュースでの全英オープンは初体験だった松山英樹。2日目には優勝したザック・ジョンソンのベストスコアと同じ66を記録し、世界トップクラスの力を改めて証明した。
「13アンダーから15アンダーぐらい行けば……」
最終日を首位と5打差の18位タイで迎えた松山は、曇天のセント・アンドリュースでチャージを心に誓っていた。
「フロント9で5アンダー、6アンダーぐらいが必要になってくる。(通算で)13アンダーから15アンダーぐらい行けば(優勝の)チャンスはある」
1番ティを包むグレーな空に白い雲が浮いていた。グレーのベストと白いシャツに身を包んだ松山の姿は、空の色合いに不思議にマッチしていた。
月曜日に持ち越された最終ラウンドは観衆が少なくなって、聖地は少し静かになった。風は穏やかなフォロー。そのすべてが、松山のチャージの味方になってくれたらいいのに――。そう願いながらティオフを見守った。
一時は首位に1打差でリーダーボードに名前を連ねたが。
1番。手前に切られたピンを狙った第2打は、グリーン手前を横切るクリークをすれすれで越えてピン手前1.5メートルに付き、しっかり沈めてバーディー発進。「オー!」という声援と拍手に小さく手を挙げて応える松山は落ちついた表情だった。
2番。グリーン奥のカラーから20メートル超をぴったりカップに寄せてタップインパー。距離感やタッチは良さそうに見えた。
しかしミドルパットはなかなか入らず、2番、3番、4番と3ホール連続のパー。チャージをかけるべきゴルフという意味では、停滞感が漂った。パー5の5番は見事に2オンしてバーディーを奪ったものの、5メートルのイーグルパットを外したことが口惜しく感じられた。
7番、10番でバーディーを奪い、通算11アンダーへ。首位に1打差まで迫り、ついにリーダーボードに「MATSUYAMA」が載った。だが、それはかつてのパーマーの夢と同じように瞬間的な浮上にすぎず、あっという間に幻と化した。そう、12メートルから3パットしてボギーを喫した12番が夢を幻に変える引き金になった。
「3パットして(首位と)3打差になったんだけど、ちょっと気持ちが切れてしまいそうになった。それでもなんとかやっていたけど、なかなかバーディーにつながらなくて。その次にまた(15番、16番と)ボギーにしてしまって、最後のほうはパーを取りに行くのがやっとになった」