松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
荒天の全英、聖地で首位と5打差!
松山英樹に訪れる“決戦の月曜日”。
posted2015/07/20 11:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Maki Uchida
雨天サスペンデッドと強風サスペンデッドに見舞われ、金曜日から土曜日へと2日間に及んだ第2ラウンドを終えたとき、松山英樹は「眠いです」と言いながらも、うれしそうな笑顔を見せた。
初日に苦しんだパットが金曜と土曜の2日間は面白いように入り、4連続バーディーで好発進。「66」をマークして首位に4打差の10位へ浮上。初日に「自信がない」とまで言ったパットは、一夜明けたら、なぜ好転したのだろうか。
「いろいろ変えてる部分はあるけど、何が正解なのか、わからないまま、うまくできたなという感じです」
わからない――そうなのかもしれない。
たとえば芸術家や音楽家に「なぜ昨日より今日のほうが絵が上手く描けたのですか?」「なぜ昨日より今日のほうが上手く演奏できたのですか?」と尋ねても、「こうだから」という明確な答えが得られることは決して多くはない。本人にすら、わからないものであることも多い。
「優勝のチャンスもあるかな」と自ら口にした松山。
松山にとってのパットも、それと似ているのだと思う。理屈ではなく、「いい」という好感触。「入る」という手ごたえ。「入れられる」という自信。それらすべての相乗効果で膨らんでいく正の連鎖。その連鎖が「来る」か、「来ない」か、なのだろう。
とはいえ、偶然を望んでいるわけじゃない。ハイレベルな技術力を備えていることは大前提。それがあれば、あとはグリーンの状態や千変万化の大自然、心身の状態、いろんな様子が複雑に影響する中で、正の連鎖が偶発的に「来る」か、「来ない」か。
「あと一日、同じようなパッティングが来れば、優勝のチャンスもあるかな」
松山は自ら勝利の可能性を口にした。
1人の米国人記者が松山に「日本人初のメジャー優勝を期待され、どのぐらいのプレッシャーを感じていますか」と尋ねた。すると松山は「考えたこともないです」。
その米国人記者は通訳から伝えられた松山の言葉を聞いて、目を丸くした。
「えっ? ノープレッシャーってこと? ただ楽しくプレーしているだけってこと?」