ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルファーの高齢化を防ぐ方法は?
経済効果で測れない未来への投資を。
posted2015/07/16 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
シアトル近郊で開催された6月の全米オープンは、およそ170億円とされる地元への経済波及効果が話題のひとつとなった。北太平洋を望むチェンバーズベイGCはもともと、米国の摩天楼を作る資源の元となった採石場で、海岸線の岩場を切り崩し、2007年にメジャートーナメントを意識したコースとして新設され注目を集めていた。
時折耳にする、スポーツにまつわる「経済効果」のフレーズ。ゴルフももちろん例外ではない。
日本では2009年に石川遼が日本ツアーで史上最年少の賞金王に輝いた際、関西大学の宮本勝浩教授がその経済効果を約341億円と発表した。石川の登場によるギャラリー動員増、用具販売、スポンサー契約社の売り上げ増等を試算したものだという。
7月の全英オープンを前に、日本人で最もメジャータイトルに近い戦いを続けている松山英樹の活躍次第では、さらなる規模での効果も期待される、といったところだろう。
しかしながら、彼のメジャー初制覇が日本のゴルフ界全体を潤すことができるかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。それはゴルフが持つ市場の特異性ゆえである。
ゴルフ用品の市場は大きいが、Do市場はさらに大きい。
前提として、ゴルフはプロのトーナメントを観戦する市場よりも、プレーする市場の方はるかに大きいスポーツだ。
クラブやボールといったゴルフ用品の市場は近年では年間約2600億円前後で推移している(矢野経済研究所調べ)。オールジャンルのスポーツ用品市場約1兆3600億円のうち、ゴルフ部門はトレーニングウエア部門、スポーツシューズ部門等を抑えて最大の約20%を占める。それぞれのギアの単価の価格的な高さや、用具への依存度が高いスポーツであることから、野球&ソフトボール市場、サッカー&フットサル市場の約3~4倍の規模がある。
さらに、1年間にゴルフ場で支払われたプレー料金のべ9000億円、スクール受講の約200億円を加えたおよそ1兆2000億円前後が「Do GOLF」の年間の市場規模といえそうだ。
一方で、日本の男女ツアーの観戦チケットや、それに伴う会場でのギャラリーによる支出といった、プロゴルフを「観る」マーケットは用品市場と同じ年間約2500億円程度だ。