ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルファーの高齢化を防ぐ方法は?
経済効果で測れない未来への投資を。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2015/07/16 11:00
日本ゴルフ界にとって、松山英樹の活躍は市場拡大のためにも必要な状況だ。彼に憧れてゴルフを始めた、という子供達が将来の日本ゴルフを支えることにもなるのだから。
“プロが使っている”だけでは売れない時代に。
「観る」と「プレーする」の間に相乗効果があれば望ましいが、スポーツ市場等の調査を行う株式会社矢野経済研究所のスポーツ事業部部長・主任研究員の三石茂樹氏はこの「Do GOLF」と「Watch(Spectator) GOLF」の2つの要素の関係性について「密接とはいえない。波及効果は数年前に比べて“目減り”しているように感じる」というのである。
用具メーカーは自社製品を使うプロの活躍をサポートし、人気選手になると各社間で契約競争を繰り広げる。しかし、その広告面での費用対効果に陰りがでているのだ。
「以前に比べると、アマチュアゴルファーが入手できる用品の情報がメディアなどを通じて飛躍的に増加し、単純に“プロが使用している”だけでは購入に結び付かなくなっています。ただ、唯一使用ボールに関しては、ユーザーが素直な反応を示している。昨年松山選手がPGAツアーで優勝した翌週以降、(松山が契約する)ダンロップスポーツのボールのシェアが上昇しました」。プロの活躍によって何万円もするドライバーやアイアンセットを買うことはできずとも、消耗品のボールは影響が大きい、ということだろうか。
ゴルフ人口の多くは40代以降に偏っている。
約860万人とされるゴルフ人口だが、その多くは40代以降の年配の世代。学生競技が盛んな野球、サッカーなどとは大きく異なるのはこの年齢構成だ。近年は団塊の世代のリタイヤによるゴルフ離れが影響して、深刻な市場縮小が起こるという懸念が「2015年問題」という言葉で叫ばれている。
実際には、今年上半期においては目立った減少傾向は見られなかったものの「とりあえず2015年は回避しても、これがボディブローのように効いてくる」と三石氏。「世の中の健康志向の向上によりスポーツ活動は上昇傾向だが、ゴルフは必ずしもそうではない。現在のシニアの方々はビジネスの一環としてゴルフをプレーする方が多かった。高度経済成長に合わせてゴルフ人口は伸びてきたが、その恩恵はバブル期までで終わってしまった」
日本の場合、ゴルフがスポーツ文化としてよりもビジネスツールとして発達した側面が色濃かった。「Do GOLF」は、いまがまさに正念場。それゆえ「Do GOLF」にとって「Watch GOLF」の盛り上がりとの連係は、今後の市場活性化の課題でもある。「日本のマーケットには“サプライズ”とタイミングを見計らった準備がもっと必要ではないでしょうか。アメリカのメーカーはやはり、ゴルファーの心をくすぐるのがうまいと思います」(三石氏)。
契約選手のツアーでの活躍を見越した広告や商品展開等の準備に時間をかけることで、相乗効果を最大化させるのがメーカーの“うまさ”。メジャー制覇を遂げても、翌週にはすぐに次の試合があるプロゴルフゆえ、企業側のスピード感も問われている。