F1ピットストップBACK NUMBER
「レース人生でも完璧な決断だった」
ハミルトン、聖地で最多3勝に並ぶ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2015/07/12 10:50
チームメイトのロズベルクに喜びを爆発させるハミルトン。昨年に引き続きドライバーズポイントでもトップを走っている。
ハミルトンが挑んだ3度目のシルバーストン制覇。
クラークはイギリスGPで通算5度の優勝を経験しているが、1回目の'62年はエイントリーで開催されたもので、'64年の3回目の優勝もブランズハッチであるため、シルバーストンでは3回しか勝っていないという計算となる。
またマンセルは通算4度イギリスGPを制しているが、最初の'86年はブランズハッチでの勝利であるため、シルバーストンでの優勝は3回となる。
今年のシルバーストンでは、その偉大な2人の記録にハミルトンが挑んだ。
ハミルトンは過去に2度シルバーストンでのイギリスGPを制しているが、いずれも予選は2列目以下で、展開に恵まれた末の勝利。ポールポジションを獲得した今回は自力での優勝を狙っていた。
しかし、スタートで2番手に後退。さらにセーフティーカーが導入された後の再スタートでもう1つポジションを落とし、3番手からのレースを余儀なくされた。
シルバーストンは高速コーナーが多い代わりに、ストレートはいずれも1km以下。オーバーテイクが困難なサーキットである。
ピットイン戦略での逆転を狙ったハミルトン。
コース上での追い抜きが難しいと判断したハミルトンとチームは、ピットストップ戦略で前を走る2台のウイリアムズ勢をかわす作戦に出た。
この作戦が見事に的中し、ハミルトンはピットストップ後にトップに立つ。
ところが、レース後半、シルバーストンに雨が降り始める。
しかも、雨は一気に降り始めるのではなく少しずつ、しかも部分的に降り出したため、ウエットタイヤへ交換する判断が難しかった。
このような状況では、ピットにいるエンジニアよりも、実際に走行しているドライバーの判断が優先される。
43周目、上位勢で最初にピットインする決断を下したのは、トップを走るハミルトンだった。