フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
パトリック・チャン印のワインって!?
フィギュア選手、引退後の様々な人生。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byJMPA
posted2015/07/08 11:00
自身の名前を冠したスケート学校もバンクーバーに創設される。国民的英雄は、これからもカナダのスケート界で大きな存在感を放つことだろう。
フィギュアスケート界から姿を消した選手たち。
選手の中にはきれいさっぱりと、スケート以外の道を歩み始める選手もいる。
昨シーズンの全日本選手権のエキジビションで、突然引退宣言をした町田樹はまだ人々の記憶に新しい。2014年には世界選手権で2位となり、まだまだこれからが期待されていた選手だっただけに、誰にも予測できない不意打ちの引退劇となった。
だが本人の中では、極秘のうちにセカンドライフの準備が進行していた。優勝した2014年10月のスケートアメリカの開催中に、早稲田大学の大学院から合格通知が届いていたのだという。研究者を目指すという町田は、その後すべてのメディア出演依頼を断って静かに第二の人生を歩み始めている。
海外に目を向けると、彼ほどドラマチックではないが、やはり大きな転身をはかったスケーターは少なくない。元世界女王のミシェル・クワンは競技引退後、スポーツ親善大使などの役目をこなしながらコロラドで大学、大学院を卒業。2013年に政治家、弁護士のクレイ・ペルと結婚し、ソチオリンピックでは米国のテレビ解説者として久しぶりにスケートの会場に姿を見せた。
2010年バンクーバー五輪王者のエヴァン・ライサチェクは、重なる負傷で競技復帰を断念した後、現在はニューヨークに移住して不動産業に転職したという。
本人のユニークなキャラクターが好感をよび、今や売れっ子のテレビタレントとなった織田信成は、世界で見ても珍しいケースだろう。タラ・リピンスキー、サーシャ・コーエンなど女優業を志願した選手は少なくないが、今のところ本格的にハリウッドでキャリアを築いたスケーターは1930年代に活躍したソニア・へニー以外いない。
ニューヨークで充電中の高橋大輔。
気になるのは、アメリカで充電中の高橋大輔である。
4月に渡米した彼はニューヨークで英会話学校に通いながら、ダンスレッスンも受けている。現在のところごく限られたスポンサー活動のみで、メディア露出も最小限に抑えている高橋は、エージェントを通してこのようにコメントした。
「現在は特に(将来のことは)決まっていないんです、なかなか簡単には決まらないと思いますが、語学勉強やダンスを通して見えてくるものもあるのではないかなと思っています」
世界中のファンに多くのものを与えてくれた彼のスケート人生に相応しい、充実したセカンドライフを見つけて欲しい。