F1ピットストップBACK NUMBER
ハミルトンの自信は過信と化したか。
エンジニア無視に、ヘルメット問題。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMamoru Atsuta
posted2015/05/17 10:50
ベルのヘルメットをかぶるハミルトン。2つの星はタイトル2回を意味しているが、最近は王者の資質を疑わせる行動が続いている。
「自分のことは、自分で決める」
これはメルセデスAMGとの契約更新がなかなか発表されないことに言及したメディアに対するハミルトンの答えである。
2013年から続いた契約は今年末で満了するのだが、現在マネージャーを持たないハミルトンは、チームとの契約の交渉を自ら行なわなくてはならない状況にある。
しかし冒頭のセリフは、「自分のことは、他人の指示を受けずに自分の判断で決める」という意味にも聞こえる。ハミルトンはこんなコメントも発しているからだ。
「いま、一番いい時間を過ごしている。レース以外で何をやっても、逆にそれがいい気分転換になってコース上で良い結果につながる。そうすれば誰も文句は言わない」
自信が過信になっているのかもしれない――。
契約についても、すでに書類はできているのだが、サインをする段階になってハミルトンがいたずらに時間を延ばしているという話を関係者から聞く。
「ニコに追いつくのは本当に不可能?」
第5戦のスペインGPでも、ハミルトンとチームの間にちょっとした食い違いが起きた。
予選トップタイムはチームメイトのニコ・ロズベルグ。今年初めてポールポジションを逃したハミルトンは、2位スタートの決勝でスタートでホイールスピンを喫して3番手に後退してしまう。
逆転優勝を狙うチャンスは、まず1回目のピットストップで来た。ここで2番手を走行するフェラーリのベッテルをかわさねばならない。
しかし、ピットストップ時のタイヤ交換作業で手間取り、ハミルトンは再びベッテルの後塵を拝することとなる。
2番手を奪いたいメルセデスAMG陣営は、ハミルトンの戦略を2ストップ作戦から3ストップ作戦に切り替えた。この戦略変更が功を奏し、ハミルトンは51周目に2番手の座を奪うことに成功。
しかし、彼はそこで満足しなかった。
「ニコに追いつくのは本当に不可能? やってみなければわからないじゃないか?」