岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
世界最強リーグに日本が入るまで。
スーパーラグビーは“魔法の杖”か。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2015/04/23 10:40
日本人としてスーパーラグビーに初出場したハイランダーズの田中史朗。世界最高峰のレベルを経験することは、選手としての成長を飛躍的に加速させる。
スーパーラグビーの試合は、絶対に圧倒的に面白い。
3つ目は日本国内のラグビーに対する認知度を高め、新たなファンを獲得する起爆剤になる可能性です。
たとえばファンの獲得競争という点で、ラグビーはプロ野球やJリーグに伍していかなければなりませんし、ひいては映画やテレビゲーム、東京ディズニーランドのようなアミューズメントパークもライバルになっていきます。結局のところ競技の人気を高めるためには、世の中にごまんとある魅力的な娯楽の中からラグビーが選ばれる環境を作リ出す必要があるのです。面白そうな試合があるから今日はテレビで中継を観てみよう、今度はスタジアムに足を運んでみようと、現在よりも多くの方々に思ってもらえるようにしていかなければならない。
そこで鍵を握るのがコンテンツの質ですが、スーパーラグビーは人々の心を掴んでいく上で強烈な武器になります。2016年以降、テレビ中継やスタジアムでスーパーラグビーの試合に触れた方は、圧倒的な迫力とスピード感、手に汗握るスリリングな展開と単純な試合の面白さに、必ずや驚かれると思います。また、ファンの皆さんのラグビーを見る目が肥えることが、長期的に代表のレベルアップをもたらすことは言うまでもありません。
現代のスポーツは、ビジネスモデルなくして成立しない。
そして新たなエンターテインメントの誕生は、日本ラグビー界にかつて存在しなかった、ビジネスモデルの確立にもつながります。
スーパーラグビーは、1つの興行として完全に採算ベースで運営されています。また大会に向けては、日本協会とスーパーラグビーをマネージメントする一般社団法人が共同でチームを編成するため、ファン層の拡大やスポンサー獲得などの分野において、従来とは異なる形で、日本ラグビー界全体が発展していくことも期待できます。
現代社会におけるスポーツは、収益性の高いビジネスモデルなくして成立しません。スーパーラグビーへの参戦は、日本ラグビー界を長期的に底支えしていく新たなシステムも作り上げていくことになるでしょう。これは今日に至るまで、日本のラグビーをひたむきに支えてきた様々な企業の負担を軽減するだけでなく、協会の経営体質の脆弱さを改善し、世界と真に戦える集団に生まれ変わることも可能にするのです。